2022年4月に行った看護系ICT教育チームへの取材をきっかけに、チームのみなさまにICTを活用した講義や演習、代替実習について、連載のご執筆をお願いいたしました。授業計画や実践内容をまとめたスライド、授業に用いた資料を「教材シェア」にご登録いただいておりますので、多くの方にご活用いただけますと幸いです。(NurSHARE編集部)
はじめに
本連載は、筆者が代表を務める看護系ICT教育チーム(以下、「ICTチーム」)のメンバーたちが日々実践する、ICTを活用した講義・演習・代替実習の方法について、主に教育用電子カルテ『Medi-EYE』を用いながら紹介します。また、ICTを用いたオンライン試験や評価の方法についても紹介していきます。
看護系ICT教育チームとは
看護系ICT教育チームは2021年の2月に発足した、ICTを用いた看護教育について学び合うコミュニティです。大学の教員を中心として、専門学校の先生や臨床指導者、看護教育に関わる企業の方など、さまざまな職種・立場の方が参加されています。これまでの活動内容についてはこちらの記事を参照してください。
本連載の目的
これまで本ICTチームの活動を通して、様々なICTの活用事例を紹介し合い、各々の学校でのICTを用いた演習や代替実習の内容をブラッシュアップしてきました。その中には、貴重な知見や実践例が多くあり、これを少しでも多くの看護教員のみなさまと共有し、看護教育がよりよくなる一助になればと思い、本連載を配信することにしました。
なぜ教育用電子カルテを用いるのか
本連載では、教育用電子カルテ『Medi-EYE』を用いた事例を多く紹介します。では、なぜ電子カルテなのか、『Medi-EYE』なのか、というところをご説明します。
まず、なぜ『Medi-EYE』なのか、ですが、それは、このICTチームが発足した時点で、実際に近い電子カルテがオンラインで閲覧できる教育用のシステムは『Medi-EYE』しかなかったからです。教育用電子カルテを用いたICT教育を行うには、自ずと『Medi-EYE』を用いることになりました。
次に、なぜ教育用電子カルテを用いるかです。従来の講義や演習の授業における事例演習では、1枚の用紙に必要な情報だけが記載されている紙上事例を使用して演習を行うことが多かったのではないかと思います。しかしこの方法では、学生自らが“その疾患、状態の患者を看護するうえで必要な情報は何か”という思考の部分のトレーニングが十分できません。そして、実習に行って初めて電子カルテを操作し、膨大な情報を前に右往左往するといった状況が起こります。つまり、電子カルテが主流となっている現在の医療施設の状況に対して、学生の実習に対するレディネスが十分ではないという課題が生じていました。教育用電子カルテを用いて講義・演習を行うことで、そのレディネスを高めることできるのです。
実際、本学(東京医療保健大学和歌山看護学部)では、低学年から講義に教育用電子カルテを導入し、閲覧することに慣れてもらうようにしています。学生からは、「実習に行った時にまずカルテのどこから情報を取ったらいいかを考えることができた」「情報収集にかける時間が短くなり、ベッドサイドに行ける時間が増えた」などのポジティブな感想が複数寄せられています。
SA(student assistant)制度の活用
ICTと直接関係はありませんが、本連載で紹介する本学におけるICTを用いた2年次や3年次の演習・代替実習には、4年生のSA(student assistant)が登場します。これは、筆者が所属する成人看護学領域独自の取り組みであり、公募制とし、応募者とは事前に演習指導に必要な資料を渡して打ち合わせを行います。SAは下級生の実技を観察し、フィードバック役なども担います。
SAを経験した4年生からは、「演習へ参加するにあたり、周術期看護について再学習できた」「臨床指導者も参加していたので、3年生以上に緊張した」「昨年度の実習での学びが整理できた」などの感想がありました。下級生への学習支援によってSAを担った4年生にとっても実習経験の補充学修や国家試験対策の機会となるなどのメリットがあります。このように、ICTだけではなく、様々な学習方法も取り入れることで、よりよい教育を行うことを目指しています。
『Medi-EYE』の使用方法
『Medi-EYE』の使用方法の動画は製品のサイト(https://medi-lx.co.jp/site/login)の右側にあるinformationにも掲載されています。
また、本連載にあたり、ICTチームのメンバーである本学の山田修平先生にお願いし、どの学校の学生でも閲覧できる『Medi-EYE』の使用方法の解説動画を作製していただきました。事例患者の情報収集のポイントがわかりやすく解説されていますので、ぜひご活用ください。(「教材シェア」の動画からも視聴できます)
またこの動画以外にも、低学年向けに『Medi-EYE』事例患者の情報を整理するための『電子カルテ演習ワークシート』も作成しています。「教材シェア」に登録しておりダウンロードもできますので、ぜひご利用ください。
今後の連載内容と関連教材について
本連載では、以下の内容の配信を予定しています。また、記事と併せて、関連する資料や教材を随時「教材シェア」にも登録していきますので、多くの方にご活用いただけますと幸いです。
連載リスト
◇『Medi-EYE』を使用したシミュレーション演習:急性期看護援助論において
◇『Medi-EYE』を使用した代替実習:急性期看護学実習において
◇『Medi-EYE』とリアルシミュレーションを融合した代替実習
◇ LMSを利用した代替実習の作り方
◇ 見学実習とシミュレーション演習を組み合わせたハイブリッド型実習
◇ 急性期から終末期まで一連の経過を通したシミュレーション教育の展開
◇ ロールプレイとピア評価を用いた学内・オンライン実習
◇ 代替実習として行う他学部合同カンファレンスの実際
◇ オンラインアンケートサービスの活用① 学生の主体的な学びにつなげる授業内小テストでの利用
◇ オンラインアンケートサービスの活用② 定期試験における利用と運用方法
◇ ICTを活用した精神看護学領域における代替実習
◇ 代替実習における地域住民の参加への取り組み
連載の他にも、連載内容に関連したイベントをNurSHARE発で開催していきたいと思っていますので、みなさまのご参加をお待ちしております。