定期試験での運用
前回記事では授業の中での小テストの運用について紹介しましたが、総括的評価としての定期試験においてもオンラインアンケートサービスを活用することができます。定期試験にオンラインアンケートサービスを用いると、対面で行うのはもちろんのこと、遠隔でも実施が可能となります。
遠隔で定期試験と聞くと「不正行為の対策はどうするの?」などと色々な不安がよぎると思います。今回は本学で実践した定期試験の運用例をふまえて、不正行為対策も含めて
1. 試験問題の作成
2. 試験問題の配信
3. オンタイム・オンラインでの試験運営
について注意点を紹介していきます。
1. 試験問題の作成
オンラインで総括的評価のような重要な試験を実施するには「試験の作り方」が重要になります。それは対面での試験に比べて不正行為への対策が難しいからです。後述の試験運営の項で述べますが、いくつか不正行為を抑制するような対策はあるものの、それは完璧ではありません。コントロールできない部分があることをある程度許容して運営する気持ちが必要です。どうしても不正行為を完璧に防ぎたいのであれば、対面で試験をしたほうがよいでしょう。
さて、それでは肝心の試験問題の作成についてですが、カンニングを予防するための方略は大きく分けて2つあります。それは「不正行為をしても正答するのが容易ではない問題」とすることです。
小論文などの記述式の問題がこれに当たります。一つの明確な解答がない問題として、思考を問うような形式とすればカンニングなどの不正行為自体は大きな問題にはなりません。ただ、この方法だとオンラインアンケートサービスで自動採点・集計という機能を活用できませんので注意が必要です。
もう一つは「試験時間いっぱいかかるような問題数にする」ということです。試験中に調べながら取り組んだとしたらとても時間が足りないような問題数にするということですね。本学で実際に実施した例としては、資料持ち込み可として1時間の試験時間で50問の選択問題とした試験があります。しっかり試験対策している学生は十分間に合う時間ですが、資料の中から該当箇所を探して解答していてはとても間に合わない問題数です。このように、資料持ち込み可として、ある意味カンニングがあることを想定して問題を作成すれば、カンニングは問題になりません。この「択一の問題を大量に出す方法」ならオンラインアンケートサービスで採点・集計が簡単にできます。
2. 試験問題の配信
試験問題の配信方法には様々な方法があります。試験問題のページにアクセスするためのURLをメールで共有する方法、QRコードで共有する方法、学内で利用しているLMSからアクセスできるようにする方法などがあります。試験問題の配信で注意すべき点は、設定や共有の仕方を間違えると、試験時間前から学生が試験にアクセスできてしまう可能性があるということです。
事前にメールで共有する場合は、学生が試験時間前に試験問題にアクセスできないように試験ページを設定しておく必要があります。試験開始時に教員が手動でアクセスを許可する設定もあります。
QRコードでの共有は学生がスマートフォンでアクセスすることになってしまうので期末試験での運用には適していません。
LMSでの共有は一番確実で簡単な方法となると思います。本学で使用しているWebClassというLMSであればアクセス開始時間の設定も容易です。LMSを導入している学校はLMSを経由するのが最も安全です。
3. オンタイム・オンラインでの試験運営
本学でオンラインアンケートサービスを用いたオンタイムでの定期試験を実施した時の方法を少しだけ紹介します。
1)Zoomのブレイクアウトルーム機能を活用して1人の教員が監督する学生を少なくする。
例えばZoomであればブレイクアウトルーム機能を使って1人の教員が確認する学生の数を少なくすると運営しやすくなります。Zoomは1画面の中に最大49人までしか表示できないので、それ以上の人数だと学生の様子を確認するために画面を切り替える必要が出てきます。
本学で実施したときはおよそ100人の学生を教員4人で25人ずつ監督しました。25人程度であれば一つの画面で確認できますし、不審な動きがあれば気づくことができます。
2)PC以外のネットワーク機器の使用の禁止
ビデオチャットツールとテストにアクセスする端末をPCに統一しないと、学生がPCを触ったりスマートフォン端末を触ったりといった状況が生じてしまい、不正行為との判別がつきにくくなってしまいます。全てPCからアクセスするとして統一してしまえば、ある程度不正行為がないかどうかの観察ができるようになります。
3)カメラは必ずオンにして上半身全体を画面に映し、マイクはミュートしない
試験中は、不正行為がないことを証明するために「カメラ機能オン」として「上半身全体を映す」ことが必要であることを学生に伝えて意図も理解してもらいます。
また、マイクがミュートになっていると、いくらでも音声を使った不正行為が可能です。例えば最悪の場合、学生同士で通話がつながっていて話しながら試験を受けることもできてしまいます。学生のマイクは必ずオンにします。自宅から試験をしているときはどうしても生活音が入ってしまうことがありますので、特定の学生の騒音が気になるときはミーティングのホストがミュートすることもできます。
4)ネットワークトラブル時の連絡先を事前に伝えておく
オンラインでの授業・試験運営にはネットワークトラブルがつきものです。ネットワーク環境のトラブルは学生自身の努力では回避できない部分もあるため、対応を検討しておくことが必須です。ネットワークトラブル発生時の対応は電話が確実です。事前に学生に連絡先として電話番号を伝えておくと良いと思います。
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※詳細は【教材シェア】よりご確認いただけます。
最後に
2回にわたり、オンラインアンケートサービスを用いた小テストや試験の運営について紹介してきました。
ツールを活用すれば印刷・配布・回収・採点・集計といった多くの行程が省略され、便利になることがいっぱいあります。その反面、問題の形式が限定されたり、部分点をあげるような採点はかなりの工夫と細かい設定が必要になったりといった弱点もあります。それぞれの良さを理解した上で、どちらも選択できるということが重要です。
さらに、遠隔での期末試験なども可能になるので、広い会場を準備できないような時にビデオチャットツールを使って試験を運用することもできます。これに関しても、不正行為を防ぐためには様々な工夫が必要になりますし、学生のネットワーク環境によっては様々なトラブルが生じる可能性もあるので万能とは言えません。
それぞれのメリット・デメリットを把握し、必要な工夫をしながらICTを使うか使わないかを選択できるように準備していきたいですね。