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『Medi-EYE』を使用したシミュレーション演習:急性期看護援助論において

『Medi-EYE』を使用したシミュレーション演習:急性期看護援助論において

2022.06.23北得 美佐子(東京医療保健大学和歌山看護学部 教授)

 連載「ICTを活用した講義・演習・代替実習-教育用電子カルテ『Medi-EYE』を用いて」の第2回記事です。本連載の目的や連載リスト等は初回記事をご覧ください。(NurSHARE編集部)

 

はじめに

 本稿では、演習における教育用電子カルテ『Medi-EYE』活用事例をご紹介します。
 筆者が所属する東京医療保健大学和歌山看護学部の成人看護学領域では、2年次前期に急性期看護援助論、後期に慢性期・回復期看護援助論を履修し、3年次後期~4年次前期にかけて領域実習を行っています。コロナ禍が始まったころは全面オンライン実習となった時期もありましたが、徐々に受け入れ態勢を整えていただき、十分な感染対策を行いつつ臨地での実習が再開されました。
 しかし、臨地実習の制限が緩和されても、地域の救命救急や感染対策の拠点病院でもある実習施設の大変な状況は変わりません。手術件数の減少や入院期間の短縮などにより、これまでのように領域実習で看護過程の展開を行うことが難しい状況が続きました。また、昨年度(2020年度)のコロナ禍の影響で、学生の実習に向けた準備も十分とはいえませんでした。

 実習スケジュールを充実させ、到達目標に近付けるためには、今年度の各学年の学生のレディネスを把握し、不足部分を補填するための代替実習および講義を設計していく必要がありました。
 検討していく中で、コロナ禍の終息の見通しが付かない状況下では、成人看護学領域の演習を行う2年生の段階から臨地実習を意識した介入が必要であるということや、3年生は、前年度のフィジカルアセスメントや看護技術演習、基礎看護学実習がオンライン演習や代替実習で行われた時期があったため、「患者に関する情報の収集と意味づけ」や「患者の情報に基づく看護過程を経た思考・実践」の部分を強化する必要性があると考えました。
 

学生のレディネスを把握し今年度の取り組みを計画

 

2年次の急性期看護援助論におけるシミュレーション演習

 本学では、2年次前期の急性期看護援助論の最後のコマで、Medi-EYE事例を用いた『術直後の観察』と『第一離床の支援』のシミュレーション演習を行っています。
 

成人看護学領域の科目構成


 コロナ禍で学内演習の機会も減少していることから、隣接する実習施設である日本赤十字社和歌山医療センターの空き病棟に設置されたスキルラボをお借りして、臨場感を味わってもらいつつ、学修を進めています。

 以下が演習方法の簡単な説明です。
 

演習の流れ

① 演習の一か月以上前に急性期看護援助論の講義の際に事例と課題シートを配布し、術直後の観察項目と第一離床の援助計画を記載して演習に臨むよう準備を行いました。看護の視点については、演習の前の講義内でグループワークを行い、レディネスを整えました。

② 演習は、密を避けるために1学年約100名の学生を4グループに分けて時間差で登校し、『教室(事前学習の確認』⇒『準備室(オリエンテーション)』⇒『スキルラボ(実践)』⇒『教室(デブリーフィング)』と、グループ毎に順次時間を決めて実施してもらいました。スキルラボでは、4人部屋のうち2ベッドを利用して、同時に3病室6ベッドで行いました。

③ スキルラボでの実践は、実施→報告→フィードバックの順に行いました。

④ 演習前後のグループは、キャンパス内で自己学習やレポート課題、振り返りに取り組みます。

⑤ デブリーフィングではグループ毎に振り返りを行い発表し合います。この際も密にならないよう、2グループずつ午前・午後に別れ、更に複数教室に別れてZoomで発表内容を共有しつつ行いました。
 
急性期看護援助論のシミュレーション演習のスケジュールおよび評価方法


 また本学の2年生の演習には4年生がSA(Student Assistant)として参加し、チェックシートを用いて2年生の観察の状況や技術をチェックし、1グループの演習が終わるごとに、後半のデブリーフィング時のグループワークのヒントとなるようなフィードバックを簡潔に伝えてもらいました。複数教室をZoomで繋いで他のグループとも学びを共有し、SAからもコメントしました。
 

SAが2年生の観察の状況や技術をチェック
 
演習後はグループで振り返り、その後Zoomも用いて全体で発表・共有


 演習の目標や準備、光景などはこちらのスライドにもまとめていますのでご覧ください。

北得 美佐子

東京医療保健大学和歌山看護学部 教授

きたえ・みさこ/大阪府出身。大阪市立大学大学院看護学研究科前期博士課程修了〈看護学修士〉。臨床勤務15年を経て、2007年より堺市医師会堺看護専門学校の専任教員に着任。2012年関西医療大学講師、2016年同准教授、2019年東京医療保健大学和歌山看護学部看護学科准教授を経て2022年より現職。和歌山県立医科大学大学院医学研究科 地域医療総合医学緩和医療専門医養成コース博士課程在学中。研究テーマは『がん患者の遺族に対する緩和ケアの質の評価』。近年は、『インストラクショナルデザインを用いた授業の評価』についても探求している。

企画連載

ICTを活用した講義・演習・代替実習-教育用電子カルテ『Medi-EYE』を用いて

看護系ICT教育チームのメンバーの方々に、ICTを活用した講義や演習、代替実習の具体的な実施方法について解説していただきます。また、連載の中で「教材シェア」に登録されたさまざまなスライドや資料もご紹介していきます。

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