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第7回:ミスをしたとき、どのように対処していますか?

第7回:ミスをしたとき、どのように対処していますか?

2026.03.26山中 真弓(活水女子大学看護学部 学部長)

ミスをしたとき、されたとき

 みなさんは、ミスや失敗をしたときどのように対処していますか。一般的には、振り返り、原因を分析し対応策を考える、という答えが返ってくると思います。しかし、私は、しばらくウジウジと落ち込み、考えてしまいます。感情的になったり、周囲のせいにし自己防衛することもあります。ただ、ミスをしたときは周囲に迷惑をかけていることがほとんどですから、落ち込みながらも謝罪し、対処しています。読者のみなさんの多くも同様ではないでしょうか。ネガティブな時間を過ごし、時が経ってからやっと前向きに振り返れるようになっているのではないでしょうか。
 このように、誰かがミスや失敗をしたときは、まずは謝罪と対処が優先され、失敗した当人はネガティブな心理状態で時間を過ごし、その後に立ち直って振り返り、改善策を考えるという流れが本人にも、周囲にも安心をもたらすのだと考えます。

 しかし、自分がミスを「された」立場になったとき、現実には原因追及という名のもと、ミスをした相手をつい責めてしまうという人が多いのではないでしょうか。私もそのような反応をするときが過去にありました。とくに、子育てに関しては子どもに対して怒ることがよくありました。周囲でもそのような状況をよく見ます。
 また、看護学校においては、教員が学生にそのように対応している場面を見ます。映画などで見る軍隊のようだと感じるときすらあります。以前は、私もそれが普通だと思っていました。周囲の人たちに、同じように責めるような対応をされていたからだと思います。育てられたように行動してしまっていたようです。しかし、時代は移り変わっています。時代の潮流に合わせて自分自身が変わっていく必要があります。
 誰かがミスをしたときや失敗したとき、その人を別の誰かが軍隊のように責めたり、怒ったり注意している場面をみたとき、私たちは第三者として何を見ているのでしょう。怒っている人の怒り方と怒られている人を見ているのはもちろんですが、それぞれの表情や遣っている言葉を見ているのではないでしょうか。

ある日の学校で起こった「ふたつのミス」

 あるとき、学校の事務の管理者が部下の事務員を怒っていました。その理由となった出来事は、次のようなことでした。
 その学校では、毎週一定の曜日に朝から30分程度の講話があります。講話があることは時間割にも書かれていますし、講話をする部署が廊下に予定を掲示しています。しかし、ある日の講話については時間割に書かれていませんでした。そのため学生の集合が少なく、登校しているのに教室に入ってきていませんでした。それを受けて、講話はすでに始まっていましたが、事務員が一斉放送で「講話が始まっているので教室に入るように」と促しました。その際に、講話中の教室にも一斉放送が入っていたのです。講話をしていた講師が、驚いた表情をしていました。
 この出来事におけるミスは、時間割に講話の予定を記載していなかったことと、講話中の教室にも一斉放送を入れていたことです。ふたつのミスにはそれぞれ別の事務員がかかわっていましたが、怒られたのは一斉放送を行った事務員Aです。時間割への記載漏れをしていた事務員Bは、上司より注意喚起を受けるに留まっていました。私はその場面を見て、事務員たちに「まずは講師への謝罪が先だよ。謝罪してきなさい」と促しました。

「あなたが怒っている姿を、他の職員が見たらどう思う?」

 さて、上司のふたりへの対応の違いはどこから生じたのでしょう。事務員Bは、学生の現象を見てすぐに「私が時間割に記載漏れしていたんだ」と気づき、上司や周囲の事務員に謝罪していました。いっぽう、事務員Aは教室に一斉放送が入っていたことを聞かされても表情を変えずに淡々としていました。事務員Aの淡々とした、悪びれない態度が上司の怒りの感情を引き起こしたと思われます。事務員Aも、「しまった」とは思っていたと思いますが、感情表現が苦手な人です。日頃から笑顔もあまり見られない人でした。ですが、私はむしろ、事務員たちへの上司の対応が気になりました。

 その後私は、時間割への記載漏れをしていた事務員Bとその上司に対して、それぞれに次のように話しました。まず、分からないことを抱え込みがちでミスも多かった事務員Bには、「ごめんなさい」「ありがとうございます」「助けてください」「分かりませんので教えてください」をたくさん言えるようになろうか、と話しました。その後にもミスがありましたので、「あの先生にすみませんでしたと言おうか」とか、「書類の意味を考えてチェックしようか」などと声をかけています。
 しかし、この事例の場合、上司へのかかわりがさらに重要と考えます。そのため上司には、「あなたが怒っている姿を、他の事務員が見てどう感じていると思う?」と投げかけて考えてもらいました。多分最初は、「Aさんは悪いと思っていなさそうだし、みんなに迷惑をかけているから、私に怒られて当然」と考えていたと思います。しかし、これは上司本人とAさん、ふたりの視点だけで考えていることです。そこで、「他の事務員はどう感じていると思う」と聞きました。また、たとえば最近入職した若いふたりの事務員が「いつか自分がミスしたら、あんなふうに怒られる」と思っているかもしれないよね、と伝えました。上司は「普段は個室で面談するようにしている」と言いましたが、面談後の表情で周囲の同僚にも何があったか分かるものです。私は、「Aさんへの注意は私がするから、あなたはこれから、ミスや失敗があったとき、周囲からどのようにみられているかを意識し行動しよう」と伝えました。

*  *  *

 ミスをしたとき、失敗したとき、当事者にはまず謝罪と対処をしてほしいものです。そして、ネガティブな感情に耐えながら、少し落ち着いたら振り返り、改善策を考えてほしいと思います。そのとき、周囲の助けも借りることができれば、より成長が期待できるのではないでしょうか。
 注意する人、𠮟る人はその姿が周囲の目にどのように映るのかを考えて、お互いが効果的に、未来につながるような𠮟り方ができればいいと思います。「叱る」ことは、相手の将来や成長を思って行うものですから。このような積み重ねが、心理的安全性につながる一つだと考えています。

山中 真弓

活水女子大学看護学部 学部長

やまなか・まゆみ/国立療養所再春荘病院附属看護学校卒業。国立病院再春荘病院に勤務後、教員となり、その傍ら熊本学園大学社会福祉学部を卒業。厚生労働省幹部看護教員養成講習会を修了し、国立病院機構附属看護学校の教育主事や副学校長。その傍ら福岡大学大学院人文科学研究科教育・臨床心理専攻修了(教育学修士)。厚生労働省九州厚生局でも勤務。2025年4月より現職。休日の楽しみは娘とのショッピングやアニメ鑑賞。

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