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第5回:何度も思った「看護教員を辞めたい…」

第5回:何度も思った「看護教員を辞めたい…」

2026.01.29山中 真弓(活水女子大学看護学部 学部長)

 私は、33年前に看護教員になりました。その間2回の育児休業と1年間の研修、3年間の行政への出向があり、それを除くと27年間看護教員として働いたことになります。その間、「教員、辞めたいなあ」と思うことがたびたびありました。今回は、私が看護教員を辞めたいと思ったときのことを振り返りつつ、「看護教員が退職する」ことについて、組織運営やコミュニケーションの観点から考えてみたいと思います。

組織の管理者として離職を捉える

 看護教員に限らず、厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」1)から全体の年間離職率をみると、男性12.6%、女性16.0%、合計14.2%だそうです。私たちの業種に近いデータをみると、教育・学習支援業13.1%、医療・福祉13.8%です。ちなみに、離職率がいちばん高い業種は宿泊業・飲食サービス業25.1%、次が生活関連サービス業・娯楽業19.0%です。このデータをどのように捉えるかは皆さんそれぞれお考えをお持ちだと思いますが、私は、教育・学習支援業と医療・福祉の離職率をふまえると、私は看護師養成所組織における離職の10%程度は正常だと考えています。

 組織として懸念すべきは、離職率が高いと捉えられた場合です。離職率が高い場合に組織に及ぼされる影響として、一般的に、労働環境の悪化、組織のイメージの低下、人材育成の困難、採用コストの増加などが挙げられると思います。看護学校の場合、労働環境の悪化は、残った教員の業務負担増を意味し、教員の疲弊を招きます。そしてさらに離職が続く悪循環となります。離職者が増えると知識と技術が蓄積されず、教育の質の向上が困難となります。これらの結果は、いずれも学生確保の困難につながっていきます。学生確保が困難となると看護学校の存在意義が問われることとなります。離職率が20%を超えるようであれば、組織改革の必要性が迫られていると捉えたほうがいいと考えています。

私はなぜ「辞めたい」と思ったのか

 かつての私が「看護師を辞めたい」と考えた理由はさまざまですが、今振り返ってみると「上司や先輩に考えや価値観を否定され、教員や管理職として自信がもてない」ということが主だったようです。それでも辞めないで続けられたのは、そのとき必ず一人は「あなたは大丈夫」と言ってくれる人がいたからでした。それは、学生だったり、同僚だったり、他部門の職員だったり、家族でした。支えてくれる人がいたということが、私にとっては大きかったようです。
 私が教員や管理職として自信がもてなくなってしまったのは、どの学校に行っても言われ、心がめげてしまうある言葉があったからです。業務内容や方法、規程、会議のあり方などについて質問すると、「ここの学校の〇〇はこうなんです!」とか、「ここはこうなんです!」という強い言葉です。そんなことも知らないのかという態度です。組織の歴史が長ければ長いほどそういう傾向が強いと感じています。質問される側は、批判されていると捉えているのかもしれません。今考えると、質問する側もされる側も傷ついていたのかもしれません。
 若かった私は、質問される側の人が私の質問を「批判されている」と捉えているのではないか、という考え方ができていませんでした。むしろ、質問すると強い言い方で返されることでこちらが抑制されているように感じていましたので、自分が受け入れられていないのだと捉えていました。これが「価値観や考えを否定された、辞めたい」と考えることにつながっていたと思います。50歳を過ぎる頃にやっと、私から質問される側の人が「批判されている」と捉えていることに気づき、質問する理由や「こうするともっと良くなるのでは」ということを伝えるようにしました。その伝え方にもまだまだ課題があるのですが、相手を傷つけるということは減少しているのではないかと考えます。

「看護教員を辞めたい」と感じたときは

 続けられた理由に、支えてくれる人がいたと書きましたが、思わぬ人から支えられたことも何度かあります。それは、事務部門の人たちです。意外な人たちが自分の仕事を評価してくれていました。このような経験から、自分の子どもや学生、部下には、「誠実に仕事をしていたら必ず誰かが気づいてくれる。腐らず、あきらめないことが大切だ」と伝えています。また、「ありがとう」「ごめんなさい」「助けてください」は、社会で生きていくために大切な言葉だとも伝えています。家族や友人のほかに、自分を支えてくれる人は意外とたくさんいるかもしれません。

 辞めたいと思ったとき、自分が何かに囚われていると気づくことができたら、心がリラックスできることをやってみてください。また、いつも見ているものを見る角度を変えてみてください。何かに気づくかもしれません。私は、心をリラックスさせたいときは、漫画を読んだりアニメを見ます。そして、朝日を浴びます。以前は、散歩もしていました。ものを見る角度を変えるために、看護や看護教育以外の職種の人と話をします。本も、看護の世界以外の本を読むことが多いです。皆さんにも、自分なりの方法があると思います。ぜひ、続けてください。もしもSOSを出しても誰も助けてくれず、なにをやってもリラックスできず、あなたの心が壊れてしまいそうなら、そのときは辞めることを考えてもいいのではないでしょうか。

引用文献
1)厚生労働省:令和6年雇用動向調査結果の概況,2025年8月26日,p.6-12,〔https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/25-2/dl/gaikyou.pdf〕(最終確認:2026年1月13日)

山中 真弓

活水女子大学看護学部 学部長

やまなか・まゆみ/国立療養所再春荘病院附属看護学校卒業。国立病院再春荘病院に勤務後、教員となり、その傍ら熊本学園大学社会福祉学部を卒業。厚生労働省幹部看護教員養成講習会を修了し、国立病院機構附属看護学校の教育主事や副学校長。その傍ら福岡大学大学院人文科学研究科教育・臨床心理専攻修了(教育学修士)。厚生労働省九州厚生局でも勤務。2025年4月より現職。休日の楽しみは娘とのショッピングやアニメ鑑賞。

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看護教育と組織を考える

教員が学生とともに学び課題解決に取り組める教育組織を目指し、医療安全ほかさまざまな視点から複数の組織で風土・文化の醸成に取り組んできた筆者が、組織について、教育について、感じたことを綴ります。

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