看護教育のための情報サイト NurSHARE つながる・はじまる・ひろがる

第6回:自分が何に囚われているのか気づく

第6回:自分が何に囚われているのか気づく

2026.02.26山中 真弓(活水女子大学看護学部 学部長)

 第5回では、看護教員を辞めたいと思ったときのことを書かせていただきました。その中で、自分が「何かに囚われている」と気づいたときの、私なりのリラックスの方法もお伝えしました。しかし振り返ると、私自身、自分が何に囚われて苦しいのか気づけず、落ち込んだり、悲しんだり、怒ったり、イライラしていることの方が多かったように思います。そしてそういうときは、環境のせいにしたり、他者のせいにしたりして、そんな自分に嫌悪感を抱いて、という繰り返しでした。

生活が変わり、言葉遣いが変わり、考え方が変わる

 このような状況が大きく変わったきっかけは、30歳代のうち6年間の生活がガラッと変化したことでした。看護教員として2年目のときに勉強不足と経験不足に悩み、教員を辞めたいと思っていた私は、「働きながら大学に行けるから、行ってみたら」と当時の教務主任に勧められ、昼間は看護教員として働きながら、夜間は大学に通いました。そして、大学を卒業後、結婚し出産しました。この6年間で生活行動が大きく変わりました。それに伴い、かつては「●●だ、でも・・」や「●●しか」という言葉を遣って表現しがちでしたが、遣う言葉も変わりました。そうすると、自分が囚われていたものがたいして重要ではないことのように思えてきました。たとえば、「机の上は頭の中を表しているから、常に整理整頓しなければ」とか、「一日のスケジュールを決めたら、その通りに進めなければ」とか、仕事の仕方のような「これはこうするものだ」ということなどです。今では、明日仕事の続きがすぐできるように、と机の上は書類が出たままです。「スケジュール通りなんて、周囲をコントロールしようとしているということだ」と思うようになり、会議や授業などの守らなければならないもの優先で、あとはざっくりとしています。言葉も、「でも、しか」は遣わないように今も心がけています。たとえば、コップの水が1/2入っていたとして、「コップに水が半分しか入ってない」ではなく、「コップに水が半分入っている」です。

行動して変わったことで、何に囚われていたのか気づく

 なぜ、6年間で変わったのかというと、仕事が終わった後に大学に通うため、周囲の人々にたくさん助けてもらわなければならなかったからです。子どもを育てることもそうです。その6年間は、「助けてください」「困っているんです」「ありがとうございます」「ごめんなさい」などと口にする必要があることが多かったからです。最初はなかなかできませんでしたが、そうしなければますます状況が悪くなっていくので、だんだんと言えるようになりました。するといつのまにか、思考の堂々巡りやイライラも減っていました。
 このような経験から、私は「自分が何に囚われているのか気づいたから変わった」のでなく、「行動して変わっていったことで、自分が何に囚われているのか気づいた」のだと思っています。遣う言葉が変化していったことで、周囲の反応が変わってきて気づいたということもあると思います。

組織風土改革のため、リーダーが行動や言葉を変えてみる

 組織においても、これまでの風習や方法に囚われて組織運営がうまくいかなくなることがあると思われます。私は、組織のリーダーの行動や言葉が、その組織の風土を形作っている要因の一つであると考えています。組織風土の改革には、ビジョンを示すとか、現状の把握と可視化など、大切なことがたくさんあります。一見すると大ごとのように聞こえます。しかし、リーダーが行動や言葉を少し変えてみるということなら、今からでもすぐにできるのではないでしょうか。服装を変えるとか、いつもしないことをやってみるというのは、周りの反応が気になるところではありますが、職場では見せないプライベートな自分としてなら、少し行動してみることはできるのではないでしょうか。
 もうひとつ、これまでに読んだ本で使われていた、心に残っていたり印象的だった言葉を、すぐに使ってみるというのはいかがでしょうか。私は大学で言語学を少々学びました。そのときから、言葉は自分自身を形作っていくと考えるようになりました。遣う言葉で自分が客観的に見えることもあります。できることからまず、行動してはいかがでしょうか。そのためのヒントになる書籍も以下にご紹介します。

[堀田秀吾:ハーバード、スタンフォード、オックスフォード…科学的に証明されたすごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました,SBクリエイティブ,2025]

 堀田秀吾氏の著書『ハーバード、スタンフォード、オックスフォード…科学的に証明されたすごい習慣大百科 人生が変わるテクニック112個集めました』です。本書は、仕事をはじめとするさまざまな目標を達成するうえで「習慣化」の重要性に着目し、意思の力に頼るのではなく、何をどのように習慣化すれば目標に近づけるのかについて、各種研究機関で実証されたエビデンスに基づくテクニックを紹介するものです。たとえば、私は翌朝の炊飯器のセットをよく忘れるので、夕飯の準備をし始めたときに内釜を調理台に出しておくようにしていますが、これは「環境を利用する」という習慣なのだなと本書によって確認できました。また、デスクワークが多いと、集中力が20分前後しか持ちませんので別のデスクワークを入れています。こうすると集中力や注意力が高まり、学習効果が向上するそうです。このように、自分の日常のありようを肯定することができるようになったのです。
 「これはやってみよう」と思えるような習慣もたくさん掲載されていました。私もさらに人生を少し楽に生きていきたいと思いますので、できることからまず一緒に行動してみましょう。

山中 真弓

活水女子大学看護学部 学部長

やまなか・まゆみ/国立療養所再春荘病院附属看護学校卒業。国立病院再春荘病院に勤務後、教員となり、その傍ら熊本学園大学社会福祉学部を卒業。厚生労働省幹部看護教員養成講習会を修了し、国立病院機構附属看護学校の教育主事や副学校長。その傍ら福岡大学大学院人文科学研究科教育・臨床心理専攻修了(教育学修士)。厚生労働省九州厚生局でも勤務。2025年4月より現職。休日の楽しみは娘とのショッピングやアニメ鑑賞。

フリーイラスト

登録可能数の上限を超えたため、お気に入りを登録できません。
他のコンテンツのお気に入りを解除した後、再度お試しください。