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第1回:次世代育成・協働学習会——看護学生・新人看護師の臨床での学びを支えるために語り合い、学び合う

第1回:次世代育成・協働学習会——看護学生・新人看護師の臨床での学びを支えるために語り合い、学び合う

2026.04.15奥野 信行(京都橘大学看護学部・大学院看護学研究科 教授/看護学部長)

はじめに:看護学生から新人看護師まで、臨床での学びをシームレスに支えるための学習会

 近年、実習環境に加え、看護学生(以下、学生)も変化している中、学生の臨床実践能力の獲得に向けて臨地における教育の質を保証するためには、看護教員(以下、教員)と臨床指導者双方の指導能力の向上1)と連携・協働2)が重要となります。また、実習施設と看護基礎教育機関が連携・協働し、学生の学びを支える体制づくりも不可欠です3)
 卒後の新人看護師を取り巻く臨床環境も大きく変化しています。新人看護師の職業継続や看護上の課題解決、専門職としての成長を支えるためには、実地指導者による教育的支援が極めて重要であることが示されています4,5,6)。また、新人教育は、看護基礎教育で学んだことを土台として積み上げられていくものであり、卒業後に病院などで看護師として成長する段階までをシームレスに捉えることが重要です7,8)。本来、看護基礎教育と継続教育は連続した学びのプロセスとして捉えられるべきもので、近年では、新人教育において教員の積極的な活用も推奨されています9)
 私たちは、学生から新人看護師へと続く臨床での学びを切れ目なく支援し、成長の「歯車」が噛み合い、回り続けることを目指して、「協働学習会:臨床におけるよりよい次世代看護師の育成についてともに考える会」を実施しています。以前、NurSHAREにて、教員と臨床指導者が交流し、学び合う取り組みについて連載させていただきました。今回の連載は、その取り組みを土台とした続報にあたり、2024年から発足した新たな協働学習会(図1)について述べるものです。この新たな協働学習会には、教員と臨床指導者に加えて実地指導者も参加します。

本稿において臨床指導者とは、看護基礎教育の臨地実習施設に勤務し、学生の指導を担当する看護師を指します。また実地指導者とは、新人看護師に対して臨床実践に関する実地指導・評価を行う立場にある看護師を指します。
図1 新たな協働学習会の背景

 学生のみならず、新人看護師もまた「看護の初学者」であり、次世代を担う人材です。「彼らの臨床におけるよりよい学びを、どのように支えていくのか」ということについて立場を超えてともに考え、学び合う場としての、新たな協働学習会を本連載でご紹介します。

新たな協働学習会発足の経緯

 以前の連載で述べさせていただいたように、私は京都市立病院看護部の「臨床指導者会」の協力を得て、「教員と臨床指導者が学び合う協働学習会」を2017年に立ち上げました。協働学習会は、2019年後半から2020年にかけて、COVID-19の影響により一時中断を余儀なくされましたが、2021年には再開し、内容や方法を工夫しながら継続してきました。その過程で私たちは、協働学習会が教員や指導者の指導能力の向上や連携・協働の促進だけでなく、学生の学びや実習体験の質にも影響を及ぼしている可能性を感じるようになりました。

 その一つの契機となったのが、本学の卒業生の京都市立病院への就職希望者数の増加(図2)です。もちろん、この変化が協働学習会の影響によるものであると立証できるわけではありません。しかし、就職先として当該病院を希望する理由を尋ねると、多くの学生が「実習で丁寧な指導をしてもらったから」「実習がとても楽しかった、充実していたから」と答えていました。これらの学生の語りが示すとおり、指導者と教員によるかかわりや学習環境・風土づくりの結果として形成された良質な学習経験が、学生の進路選択に影響を及ぼしている可能性がうかがえます。

図2 京都市立病院に就職を希望した本学の卒業生の数の推移

 多くの卒業生が京都市立病院に就職し、現場の看護を支える人へと成長していく姿が見られるようになったことで、その道のりにかかわり、陰ながら支えていきたいとさらに思うようになりました。また、2024年に京都市立病院の「臨床指導者会」と「新人教育委員会」が合併し、「次世代育成委員会」となりました。次世代育成委員会は、学生の臨床での学びと新人看護師の成長を、分断されたものではなく連続したプロセスとして捉え直し、教育支援体制の再構築を目指したものでした。
 そこで、協働学習会も「臨床におけるよりよい次世代看護師の育成についてともに考える会(本稿では引き続き「協働学習会」と表記します)」と名称を変更し、学生の実習指導にとどまらず、新人看護師の成長を支援する教育的かかわりについて、教員と実地指導者、臨床指導者が学び合い、語り合いながら探究する場となりました。

協働学習会の基本的な考え方——「語り合い」「学び合う」場として

 教育学者のコルトハーヘン10)は、教育実践の改善には理論の適用だけでなく、その実践を行っている教育者自身に目を向ける「リフレクション」が不可欠であるとしています。つまり、実際に教える経験としての「実践(Practice)」、教えることに関する知識や考え方の「理論(Theory)」、教育者の個性や感情、無意識の考え方などの「教育者自身(Person)」を往還する学びの過程(図3)が、教育者としての成長をもたらすのです。

図3 看護の教育者に学習(成長)をもたらす3つの要素の関係
[Korthagen F:Inconvenient truths about teacher learning―Towards professional development 3.0.Teachers and Teaching 23(4):387-405,2017を参考に作成]

 理論と実践をつなぎ、臨床において看護の初学者に対するよりよい教育実践ができるようになるには、「教育者自身の視点」を抜きにして考えることはできません。それは、よりよい看護の実現のために看護師の視点としての看護観、患者観が大切なことと同じです。また、教育者が自身の視点に気づくには、学びにかかわる他者との対話が欠かせません。
 本学習会の特徴は、教員と実地指導者、臨床指導者、ときには学生や2~3年目の看護師も参加し、臨床における看護の初学者の良質な学びの実現について語り(話し)合い、学び合うという対話的な営みを大切にしていることです。

新たな協働学習会の開催概要

 協働学習会の開催概要について図4に示します。また、2024年度の開催時に各回で扱ったテーマは青枠のとおりです。

図4 協働学習会の開催概要

第1回:臨床で学ぶ看護学生と新人看護師の特徴(6月)
第2回:臨床現場における学びを促すための教材化(7月)
第3回:臨床における効果的な教え方・関わり方[発問、フィードバック](9月)
第4回:良質な学びを経験するための学習環境の最適化(11月)
第5回:学生・新人指導に関するシミュレーション演習に向けた机上学習(1月)
第6回:臨床における看護学生・新人看護師に対する後輩指導シミュレーション演習(2月)

 各回、まずは学生指導・新人教育にかかわるテーマの講義を、全員で聴講します。講義の聴講後には、テーマに即したグループワーク(主にケーススタディ)を行っています。このように講義での学習→ケーススタディを中心としたグループワーク→臨床での教育実践の展開といったサイクルで学習と実践を往還させています。
 とくに最終回では、「後輩指導シミュレーション」演習を実施しています。後輩指導シミュレーションとは、実際の臨床教育場面を再現した状況下で、看護の教育者が学生あるいは新人看護師の指導に取り組み、その体験をリフレクションすることで、教育者としての知識・技術の獲得・向上、あるいは信念や価値観などといった自己のフレーム(枠組み)の捉え直し・編み直しを目指す学習方法です。後輩指導シミュレーションには、本学の学生が実習学生役、そして京都市立病院の2~3年目看護師が新人看護師役として参加してくれています(図5)。その際、効果的な教育実践についてのディスカッションにも参加し、意見や感想を述べてくれています。

図5 新人指導シミュレーション(リフレクション支援)のようす(左)と学生指導シミュレーション後のデブリーフィングのようす(右)

 協働学習会に期待される成果

 協働学習会では、ケーススタディやシミュレーションを通して他の参加者との「共同的なリフレクション」が行われます。このプロセスにおいて、他者との対話を重ねていく中で知り得た知識やスキルを「こう使えばよいのではないか」「この場面でこう活かせるのではないか」と価値づけ、自己の教育実践に持ち込み、実際に使える形に再構成することで、「自分のもの(appropriation)」11)としていくことが可能になります。このような過程は、他者との対話を通して自己の教育実践が変容していくプロセスであり、実習指導や新人教育に関する力量形成につながるものと考えられます(図6)。

図6 協働学習会における共同的なリフレクションによる学び

 また、協働学習会における他者との対話を通して生じる「自分はこのような見方や観点で学生や新人にかかわっていないな」「このような考え方で指導すると、結果が変わってくるかもしれないな」といった気づきは、教育実践にかかわる信念や価値観といった「自己のフレーム(枠組み)」を見直し、再構築する「リフレーミング(reframing)」12)の契機となります13)
 協働学習会では、多様な立場の他者の考え方や信念・価値観と相対することで、自己のそれが問い直され、次第に形を変えていきます。このような臨床での教育実践に向かう自己のあり方が内側から変容していく学びは、変容的学習14)とつながるものと考えられます。
 実際、協働学習会の参加者からは、次のような反応がありました。

・新人看護師の特徴をふまえた事例検討、シミュレーションを通して、適切な指導方法を考えていくきっかけになった。
・ミスを振り返る場面で、叱るのではなく自分の体験も共有しながら、ともに考える姿勢で新人看護師とかかわるようになった。
・実践の場でも焦らず、適切な距離で新人に必要なサポートをするよう心がけることができるようになった。
・新人看護師のできていることを見つけようと意識するようになり、できないことに囚われなくなった。
・新人看護師への指導の際、実践における思考過程を大切にして、振り返りながら教育することを改めて意識するようになった。
・学習会の資料や学習会で学んだことを、病棟の新人教育担当者と共有した。
・新人看護師の個性を活かしつつ、統一した指導ができるように、病棟の新人教育担当者とともに指導方法を検討するようにした。
・病棟の学生・新人教育を担当する職員間で、情報共有や教育方針の検討を行うカンファレンスを定期的に開くようになった。

おわりに

 2025年度からは、京都橘大学だけでなく、近隣の看護系大学の先生方にもご参加いただいています。
 本連載では、NurSHAREの【教材シェア】を通して、可能なかぎり使用した教材を共有させていただきますので、自施設での「協働学習会」の運営などにご活用いただければ幸いです。この連載が、看護の教育者同士の「語り(話し)合い」「学び合い」のきっかけとなることを願っています。

※この取り組みは、京都橘大学看護学部と京都市立病院が教育連携協定を締結し、実施しているものである。

引用文献
1)伊勢根 尚美,舟島なをみ,中山登志子:看護学実習指導に携わる看護師の行動に関する研究―病院をフィールドとする実習に焦点を当てて―.看護教育学研究 26(1):39-54,2017
2)厚生労働省:看護教育の内容と方法に関する検討会報告書,2011年2月23日,〔https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000013l6y-att/2r98520000013lbh.pdf〕(最終確認:2026年2月27日)
3)文部科学省:大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会 第二次報告,2020年3月30日,〔https://www.mext.go.jp/content/20200330mxt_igaku-000006272_1.pdf〕(最終確認:2026年2月27日)
4)大江真人,塚原節子,長山豊ほか:新卒看護師が職業継続意思を獲得するプロセス.日本看護科学会誌 34(3):217-225,2014
5)塚本友栄,舟島なをみ:就職後早期に退職した新人看護師の経験に関する研究―就業を継続できた看護師の経験との比較を通して―.看護教育学研究 17(1):22-35,2008
6)伊藤 優峻,松田 安弘,服部 美香ほか:新人看護師が看護実践の質向上に効果的と知覚する実地指導者の指導.日本看護学教育学会誌 33(2-2):55-68,2023
7)新実絹代,草間朋子:看護基礎教育と新人看護職員研修のシームレスな連携に向けて―「看護管理学」教育に関する提案―.看護教育 58(10):832-839,2017
8)文部科学省:看護学教育モデル・コア・カリキュラム(令和6年度改訂版),2025年3月17日,〔https://www.mext.go.jp/〕(最終確認:2026年2月27日)
9)厚生労働省:新人看護職員研修ガイドライン(改訂版),2014年,〔https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000049466_1.pdf〕(最終確認:2026年2月27日)
10)Korthagen F:Inconvenient truths about teacher learning―Towards professional development 3.0.Teachers and Teaching 23(4):387-405,2017
11)ジェームス・ワーチ:行為としての心(佐藤公治・田島信元ほか訳),北大路書房,2002
12)ドナルド・ショーン:省察的実践とは何か プロフェッショナルの行為と思考(柳沢昌一,三輪建二監訳),鳳書房, 2007
13)藤原顕:自己探究に基づく教師のリフレクションの在り方.福山市立大教紀 9:31-45,2021
14)ジャック・ メジロー:おとなの学びと変容―変容的学習とは何か―(金澤睦,三輪建二監訳),鳳書房,2012

奥野 信行

京都橘大学看護学部・大学院看護学研究科 教授/看護学部長

おくの・のぶゆき/国立循環器病センターでの勤務を経て、兵庫県立看護大学大学院修士課程看護教育学専攻修了(看護学修士)、2019年に神戸市看護大学大学院博士後期課程修了(看護学博士)。2003年に兵庫県立看護大学助手、ワシントン大学看護学部Visiting Scholar。2006年に園田学園女子大学講師を経て、京都橘大学看護学部准教授、2020年より同大学および大学院の教授。2022~2025年に看護教育研修センター長、2026年に看護学部学部長に就任。研究テーマは、ICU患者の主体性回復を支える学習ファシリテーション能力向上プログラムの開発、クリティカルケア看護師の臨床における学習活動とその支援方法、実習指導者と看護教員の協働的な学び、臨床看護師の「看護師らしさ」の形成。著書に『看護実践のための根拠がわかる基礎看護技術』(共著、メヂカルフレンド社、2018)、『成人看護II 慢性期・回復期 第2版 (パーフェクト臨床実習ガイド)』(共著、照林社、2018)など。趣味はバイクいじりとツーリング。

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新たな『協働学習会』―臨床における次世代看護師の育成について臨床・実地指導者と教員がともに考える

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