看護教育のための情報サイト NurSHARE つながる・はじまる・ひろがる

第1回:臨床で学ぶ看護の初学者の特徴とかかわり

第1回:臨床で学ぶ看護の初学者の特徴とかかわり

2026.05.20奥野 信行(京都橘大学看護学部・大学院看護学研究科 教授/看護学部長)

 初回記事では新たな協働学習会の概要についてご紹介させていただきました。今回からは、紹介した協働学習会の各回の具体的な内容についてご説明します。

第1回のねらい

 第1回のテーマは「臨床で学ぶ看護の初学者の特徴と教育的かかわり」です。ねらいは、「現代の看護の初学者である看護学生・新人看護師の特徴を理論的観点から学び、その特徴を踏まえた教育的かかわりや支援についての自分なりの理解を深めること」です。看護の初学者である看護学生・新人看護師の臨床での効果的な学び・教えを実現する上で、教員と臨床/実地指導者の双方で共有・共通理解しておくことは、効果的な指導だけでなく、効果的な連携・協働にもつながります。ここでの主な学習内容は、以下のとおりとなります。今回は、この中から①と④の内容をご紹介します。

①    Z世代としての現代の看護学生・新人看護師の特徴
②    臨床で学ぶ看護の初学者の特徴としてのアイデンティティ形成
③    成人学習者としての看護の初学者の看護学生・新人看護師
④    リアリティ・ショックとニューカマー・ショック

Z世代としての現代の看護の初学者(学生・新人看護師)の特徴

 まず、看護の初学者である看護学生・新人看護師が有する文化の表象、すなわちZ世代としての特徴についてお話しします。図1に示すとおり、Z世代とは、日本では、2026年現在で「13歳から28歳前後のいわゆる“脱ゆとり世代”」にあたります。

図1 Z世代としての現代の看護の初学者(看護学生・新人看護師)の特徴

 Z世代の特徴は、「チル&ミー」ということばで表現されます(図2)。「チル」とは、英語の「Chill Out(くつろぐ、まったりする)」からきている米国発のスラングです1)。受験、就職、仕事などにおいて競争が少ない環境で育っているZ世代の人たちは、マイペースに居心地良く過ごすことを大切にするのが特徴です。また、SNSの普及によって誰もが自己発信できる・している時代を生きてきたため、自己意識が強いと言われます。
 「ミー」と言う言葉は、「私は、自分は(Me)」で、自己承認欲求が強いという特徴1)を示しています。ただし、「みんなの前で褒められたくない」「失敗したくない」「叱られたくない」気持ちが強く、心理的な「圧」がかかる状況を避ける傾向2,3)があります。そのため、何かに挑戦して失敗するよりも、失敗を回避しようとする特徴があると言われています。
 その他の傾向については、図2をご参照ください。

図2 Z世代の特徴
[リクルート進学総研:大学は「Z世代」を正しく理解できているか.カレッジマネジメント 233,2022,〔https://souken.shingakunet.com/publication/college_m/2022_RCM233/2022_RCM233_36.pdf〕(最終確認:2026年4月17日)/原田曜平:Z世代―若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?,光文社,2020/金間大介:令和の新人~今、彼らとどう向き合い、ともに働くか―〈前編〉Z世代の「意識高い系」と「いい子症候群」.コミュニティケア 27(4):33-39,2025/SHIBUYA109lab:Z世代の仕事に関する意識調査,2023,〔https://shibuya109lab.jp/article/230222.html〕(最終確認:2026年4月17日)を参考に作成,イラストは生成AIにて筆者作成]

 図3は、Z世代の仕事に関する意識調査4)の「現代の若者の理想とする上司像」についての回答です。最も支持を集めた「分かりやすい言葉で説明してくれる」や「丁寧に教えてくれる」「意見を聞いてくれる」「論理的に説明してくれる」など、教育的スキルやかかわりについてのニーズの高さがうかがえます。また、「気軽に相談しやすい」、「感情的にならない」という項目が高い数値を示している点からは、学習的雰囲気や心理的安全性が学びの基盤として求められていることが推察できます。

図3 現代の若者の理想とする上司像
[SHIBUYA109 lab.:Z世代の仕事に関する意識調査,2023,〔https://www.shibuya109.co.jp/shibuya109lab/reports/230222/〕(最終確認日:2026年4月17日)を引用]

 これまで述べてきた世代的背景に加え、発達段階としての特徴もあわせて捉えることが重要です。看護学生の多くは青年期にあり、アイデンティティの形成という発達課題に向き合っています5)。また、新人看護師は、青年期後期から成人期初期への移行期にあると考えられ、臨床経験を通して自分のあり方や考え方を見直しながら、アイデンティティの形成過程にあります。
 先ほど、Z世代の特徴として、承認されたい気持ちが強いとお伝えしました。また、アイデンティティの形成においても他者からの承認が重要であるとされています。Z世代の特徴と発達課題が重なることで、自己が揺らぎやすく、他者からの承認を必要としやすい状況にあると考えられます。しかしながら、これらの特徴のみに着目するのではなく、Z世代に限らず社会全体において仕事や働き方に関する価値観は多様化しています。そのため、「個」に目を向け、相互のコミュニケーションに基づいて、指導体制や教育方法、かかわり方を柔軟に調整していくことが求められているのではないかと考えます。

リアリティ・ショックとニューカマー・ショック

 看護基礎教育を修了したばかりの新人看護師が、病院・病棟という看護実践コミュニティに参入する際、何らかのコンフリクト(葛藤、対立、ジレンマなど)を体験することが少なくありません。また、新人看護師に限らず、これと同様の体験は看護学生が慣れ親しんだ学校・大学を離れ、臨地実習に参加する際にも生じます。
 このように、新参の人たちが既存の組織や共同体に参入してくるとき、異なる文化を有する者同士、すなわち新参者と古参者が直接的にかかわりあうことになります。そこで双方が体験するカルチャー・ショックがあります。看護職の場合、新参者は新人看護師が、古参者は実地指導者も含む病棟の古参看護師が相当します。そして、その背景には、Z世代と言われる若者層と、これまでの文化や価値観を形成してきた古参層との間にみられる世代間の特徴や文化の違いが関係していると考えられます。

リアリティ・ショック

 このような現象として、新人側に生じるものが「リアリティ・ショック(reality shock、図4)」6)です。リアリティ・ショックを提唱したアメリカの看護師であるマーリーン・クレイマーは、リアリティ・ショックを「数年間の専門教育と訓練を受け、卒業後に実社会に出た新人看護師が、(自分は)実践準備ができていないと感じる現象、特定のショック反応である」と述べています6)。またそれは、認識、経験、そして看護師の集団によって共有されたもの(仕事内容や考え方、人間関係のあり方、組織文化など)に関する新人看護師の期待値と現実のギャップによって生じるものとしています。
 リアリティ・ショックとは、端的に述べると、新人看護師が入職前に抱いていた自己の期待やイメージと、入職後の現実とのギャップに直面したときに生じる心理的衝撃を指します。臨地実習で看護実践コミュニティに参加する看護学生においても、教科書や講義で学んだ内容や、自分が思い描いていた看護師の活動と、実際の臨床の状況との違いに直面し、「自分が学んできた看護と違う」「どうしたらよいかわからない」「自分の思い描いていた看護師像と違う」といった戸惑いや不安が生じることが少なくありません。
 そして、このリアリティ・ショックは、新人側にさまざまな影響を及ぼします。具体的には、就業・学習モチベーションの低下、組織コミットメントの低下、離職意思の増大、学習機会の喪失などが挙げられます。

図4 リアリティ・ショックとニューカマー・ショック

ニューカマー・ショック

 一方、古参者側に生じるのが「ニューカマー・ショック(newcomer shock、図4)」7,8)です。組織行動学者の尾形真実哉9)は、組織に参入した新人が組織の現実にショックを受けるリアリティ・ショックに対し、先輩達がエントリーしてきた新人に対してショックを受ける現象をこのように呼んでいます。これは、新人が組織に加わったとき、既存の古参者がその新人の役割意識、仕事のやり方、組織文化への適応のしかたなどから感じる衝撃や影響であり、新人の行動や価値観が自分たちのこれまでの経験や前提と異なるときに感じる違和感や戸惑いを指します。
 このニューカマー・ショックの具体として、次のような三点が挙げられます。第一に「世代間ギャップ」です。Z世代など若年層の価値観や仕事・働き方に対する意識が既存メンバーのものとの違いとして現れます。第二に「新人の積極性の欠如や質問・意見の多さ」です。自分から動かないことや自分で調べず何度も質問・確認してくるといったことに対して、戸惑いを感じる場面です。第三に「教育への負担感」です。「今の新人は説明しないとわからない」「言っても響かない」など、日常業務に加えて指導を担うことによる時間的・心理的な負担として感じられるものです。結果として、ニューカマー・ショックは古参者側にも影響を及ぼします。具体的には、教育・指導モチベーションの低下、新人との関係性の悪化、離職意思の増大、そして学習機会の喪失などが挙げられます。

ショック体験は学びのために意味のあること

 一方で、このショック体験があるからこそ、学びが両者に生まれる可能性があります。リアリティ・ショックによって、看護学生や新人看護師は、それまでの自分の看護や、その仕事・活動に対する認識・理解を見直し、より現実に即した看護を学んでいきます。また、ニューカマー・ショックは、臨床/実地指導者やその他の古参看護師が、自己あるいは病棟の看護実践や看護観、既存の慣行、価値観、考えを見直す契機となります。すなわち、看護学生や新人という異なる文化を有する他者とのかかわりの中で生じる違和感やズレは、自分たちが当たり前としてきた考え方や実践を問い直す機会となります。その過程で、新たな見方を得るリフレーミングが起こり、多様な価値観を受け入れる力が育まれていきます。そして最終的には、個々の成長や組織の活性化につながる可能性があります。

 したがって、これらのショックを単なる問題として捉えるのではなく、学びを生み出す契機として位置づけることが重要となります。そして、臨床の看護実践コミュニティに参加する看護の初学者である看護学生・新人看護師と、そこにかかわる教え手の双方にショックが生じ得ることを前提として、対話を重ねながら関係を築いていくことが、良質な学習経験を生み出し、よりよい看護の探究にもつながっていくのです。

ケーススタディ:グループワーク

 協働学習会では、講義の内容を踏まえ、現代の看護学生と新人看護師の特徴を踏まえた教育的なかかわりや支援について、自分なりの理解を深めることをねらいとして、教員および臨床/実地指導者で5名程度のグループを編成し、ケーススタディを行います。

1)事例を提示し、その事例における看護学生・新人看護師の「強み」を見出す
2)看護学生・新人看護師が「学習を進める上での課題」について考える
3)1)2)を踏まえて看護学生・新人看護師への教育的なかかわりや支援について自由にディススカッションする

まとめ

 今回は、第1回協働学習会のテーマ「臨床で学ぶ看護の初学者の特徴と教育的かかわり」についてご紹介させていただきました。参加者からは、「Z世代の特徴や発達課題、指導方法を学ぶ機会を得ることができてよかったです」「他部署の指導者や教員の意見を知る良い機会となり、楽しく学ぶことができました」などの感想をいただきました。
 次回は、「看護の初学者の臨床における学びを支える理論とスキル」についてご紹介いたします。

引用・参考文献
1)リクルート進学総研:大学は「Z世代」を正しく理解できているか.カレッジマネジメント 233, 2022〔https://souken.shingakunet.com/publication/college_m/2022_RCM233/2022_RCM233_36.pdf〕(最終確認日:2026年4月28日)
2)原田曜平:Z世代―若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?.光文社,2020
3)金間大介:令和の新人~今、彼らとどう向き合い、ともに働くか―〈前編〉Z世代の「意識高い系」と「いい子症候群」.コミュニティケア 27(4):33-39, 2025
4)SHIBUYA109lab:Z世代の仕事に関する意識調査,2023,〔https://shibuya109lab.jp/article/230222.html〕(アクセス日:2026年4月28日)
5)エリクソン, EH:  エリクソンアイデンティティ-青年と危機-(岩瀬庸理訳), 金沢文庫, 2001
6)Kramer M:Reality Shock: Why Nurses Leave Nursing.C.V. Mosby, 1974
7)尾形真実哉:新人参入の組織論的考察―職場と既存成員に与える影響の定性的分析.六甲台論集(経営学編)53(1):61-86,2006
8)尾形真実哉:キャリア初期における組織社会化の複眼的分析.神戸大学博士論文,2007
9)尾形真実哉:導入時研修が新人の組織社会化に与える影響の分析―組織社会化戦術の観点から.甲南経営研 49(4):19-61,2009
10)Edmondson AC:The competitive imperative of learning.Harv Bus Rev 86(7-8):60-67,2008

奥野 信行

京都橘大学看護学部・大学院看護学研究科 教授/看護学部長

おくの・のぶゆき/国立循環器病センターでの勤務を経て、兵庫県立看護大学大学院修士課程看護教育学専攻修了(看護学修士)、2019年に神戸市看護大学大学院博士後期課程修了(看護学博士)。2003年に兵庫県立看護大学助手、ワシントン大学看護学部Visiting Scholar。2006年に園田学園女子大学講師を経て、京都橘大学看護学部准教授、2020年より同大学および大学院の教授。2022~2025年に看護教育研修センター長、2026年に看護学部学部長に就任。研究テーマは、ICU患者の主体性回復を支える学習ファシリテーション能力向上プログラムの開発、クリティカルケア看護師の臨床における学習活動とその支援方法、実習指導者と看護教員の協働的な学び、臨床看護師の「看護師らしさ」の形成。著書に『看護実践のための根拠がわかる基礎看護技術』(共著、メヂカルフレンド社、2018)、『成人看護II 慢性期・回復期 第2版 (パーフェクト臨床実習ガイド)』(共著、照林社、2018)など。趣味はバイクいじりとツーリング。

企画企画

新たな『協働学習会』―臨床における次世代看護師の育成について臨床・実地指導者と教員がともに考える

フリーイラスト

登録可能数の上限を超えたため、お気に入りを登録できません。
他のコンテンツのお気に入りを解除した後、再度お試しください。