看護教育のための情報サイト NurSHARE つながる・はじまる・ひろがる

第40回:リフレクション 一期一会

第40回:リフレクション 一期一会

2026.03.12鈴木 留美子(仙台市医師会看護専門学校 教務部長)

リフレクションその壱:リフレクションという言葉に触れたときの感動

 遡ること、令和2年京都での夏。私は、教員人生の中でも大きな経験となる、教務主任養成講習会で学ぶ機会を得ることができました。その当時、学生指導や学校組織をどう捉え、どう学校運営をするとよいのかを考える日々が続いていました。世界はコロナ禍で、日本中が感染の可能性と危険性を孕んでいた最中、1ヵ月間も対面で学ぶというチャンスに恵まれました。名所旧跡もままならず、対面で学んでは、自己と向き合い、グループメンバーとZoomなどで夜や休日も返上して話し合い、学びを深めていました。

 ある日、気分転換も兼ね、大好きな京都の街を散歩していたときに、京都府立図書館の方が、私を「どうぞ」と招き入れてくれました。ありがたく入らせていただき中を歩いていると、教育関係の書庫で『リフレクション入門』という一冊の本に出会いました。この本を捲っていると、ユトレヒト出身のコルトハーヘン氏の考え方に賛同することができ、「学び続ける教育者のための協会」を手掛けている方たちの文章が私の中にスーッと入ってきて、このような考え方や自己を振り返る姿勢が養われたら、素敵だし、看護教育にもリフレクションの波を起こしたいなあと思った次第です。

 

学び続ける教育者のための協会(REFLECT)(編集):リフレクション入門,学文社,2019
コルトハーヘン(ユトレヒト大学名誉教授)が提唱する「リフレクション」の理論と実践について紹介する書籍。

 この本との出会いが、私にとっての大いなる分岐点となりました。看護教育に携わる者として、教育学における学びをしっかりと根付かせ、個々の看護の華を咲かせていくことが、看護基礎教育にはとても重要だと気づかされました。
 リフレクションは、特別なことではなく、日々の生活や時間の中で、気づきを増やし、振り返ることで、更なる成長した自分になれる考え方です。誰しもが身につけることで、自分の強み(ダイヤモンド)を磨くことができるものです。看護や学生指導の場面、ややもすると組織内では、できることよりも、できないことに目を向けがちですが、人が生きていく上では、できていることや強みに目を向ける方がはるかによいことではないかと感じています。

 この本との出会いを経て、第5次カリキュラム改正のタイミングで、「リフレクション」という言葉を学校にも広めたいと思い、学生だけでなく教員もリフレクションを楽しめる状況が作れるように、基礎科目に「リフレクション」を新設しました。この科目の中で、「リフレクションとは何か?」「反省ではなく内省です」「強みを見つけ、ダイヤモンドのように輝かせるのですよ」「自分を知り、相手を知る。看護に必要な考え方の種まきをしています」と、毎年1年生に話しています。3年間でリフレクティブサイクルを回し続け、この考え方を社会に出ても活用できるようにできたらいいなと、ワクワクしながら過ごしております。そして、リフレクションという言葉を理解した学生を育てられる環境にも感謝しています。

リフレクションその弐:学生時代・臨床時代へタイムスリップ—学ぶ楽しさ、看護の尊さを知った時期

 ここからは、教育の道を進むと決める前の私の歩みについて、「リフレクション」してみようと思います。
 私の看護学生時代には、看護を志し、大学や大学に準じた教育への憧れを抱く学生がおり、看護師になろうという気持ちはみんな持っていて、ひとりも欠けることなく看護の道やキャリアアップの道を選ぶ環境にありました。その中で、友人たちと楽しく過ごし、最新の看護が学びたいという気持ちを持ち、日々学習していたことは、私の今の糧になっています。私は決して優秀ではなく、10代から20代の過渡期を謳歌する学生でした。だからこそ、今自分が教育している学生にも、この時代の楽しさを味わってほしいと願っています。好奇心旺盛な私を形づくったのは、まさしく学校生活の3年間でした。当時を振り返ると、今の私から「よく頑張った」と励ましたくなります。

 しかし卒業後、最新の看護を学びたいと貪欲に東京へ向かった私は、3年間学んだことが生かせずに、日々大変な毎日を過ごすことになりました。業務の中でも、申し送りで要点をまとめて報告したり、時間を大事にしながら看護をしていくことに疲弊したものの、同期や先輩方に大変助けられながら、過ごしていました。3年間はがむしゃらに過ごし、自分らしくふるまえるようになったのは4年目くらいからでした。そのときは脳神経外科病棟に勤務しており、患者さんから教えていただくことも多く、もっと看護に携わろうという思いを強く抱くこともできました。

 たとえばあるとき、とある老舗和菓子店主の60歳代の男性を受け持ちました。脳出血で片麻痺が残った患者さんでした。リハビリ開始のためシューズが履けずにいたときに、「彼の持てる力を活かそう」と、しばししゃがみこんで一緒に時を過ごしました。できることを信じ、見ていますよと言う姿勢を示す時間を設けたら、患者さんは少しずつ履こうとする行動を示し、ついに自立することができました。家族とも良く話をして過ごし、無事に退院することができました。退院後、店先に立てるようになったことや頑張っている姿を、再会の機会に見ることができ、入院中のかかわりが生かされたと実感できました。他にも、脳腫瘍の小学5年生や、脳腫瘍の患者さんの2歳の子どもとの別れにかかわることなどを通して、患者さんを取り巻く家族との関係の大切さを身をもって感じ取ることができた時間でした。

 その後、院内のリーダー研修を受けたり、特別室で勤務したりと、私の経験してきたことは、着実に身になっていきました。そしてこのときも、家族とのかかわりの大切さを感じる機会がありました。末期のすい臓がんだった70歳代のある男性には、奥様を始めご家族がいつも寄り添っていて、毎日、ご主人の身体を隅々まで綺麗にしていました。最期の時間、夜勤中の私はお別れに立ち会う場面となりましたが、奥様が心臓マッサージをする私の手にそっと触れ、「(もう)大丈夫です」と静かにおっしゃったことが記憶に残っています。東北の温泉地に二人で行くことを楽しみにしていた姿を思い出すたびに、患者さんとご家族にかかわる尊い職業だなあと感じます。

リフレクションその参:今とこれからを生きる

 臨床経験を経たのち、私は看護教育の人生を歩むことになりました。当初は臨床で経験したことが活かせると意気込んでいましたが、学生との距離感やどういう指導が学びにつながるのかを模索する日々でした。しかし、好奇心と向上心が私の強みなので、電通育英会の「リーダー育英塾」や、宮城県の産官学連携プログラム「伊達のリカレント」などの越境学習に参加し、自己成長に邁進する日々を送ることに切り替えました。

 看護教育を行うということは、学生の将来を預かることです。学生には、専門職業人として、患者さんや対象の方の前に立ったときに、自他ともに強みに目を向ける人になってほしいなあと思っています。そのような人材を育てるため、看護教育をこれからも行う上で、一人ひとりの学生のさまざまな分岐点に色を添えられるよう、リフレクションを通して、看護の奥深さと楽しさを与え続けていきたいです。そして、看護教員は学生たちをほほえましく見守ることができる素敵な職業だと実感しながら、今も日々を過ごしています。

鈴木 留美子

仙台市医師会看護専門学校 教務部長

すずき・るみこ/東北大学医療技術短期大学部の看護師3年課程を修了したのち、慶應義塾大学病院に勤務。脳神経外科病棟などに勤務し、仙台市医師会看護専門学校2年課程夜間部門に専任教員として着任。同校2年課程全日制、3年課程全日制を担当し、2023年に現職。2016年宮城県看護協会認定看護管理者教育課程ファーストレベル修了。2020年度日本看護学校協議会教務主任養成講習会修了。2022年度「リーダー育英塾」受講。2024年度日本看護学校協議会教務主任養成講習会リーダー論講師。2025年には宮城県の産官学連携プログラム「伊達のリカレント」DX(デジタル×ビジネス変革) 講座受講。趣味はイケメン・宝塚の推し活。現在日本酒利き酒師の学習中。

フリーイラスト

登録可能数の上限を超えたため、お気に入りを登録できません。
他のコンテンツのお気に入りを解除した後、再度お試しください。