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第7回 量的研究の評価方法はこう教えている

第7回 量的研究の評価方法はこう教えている

2023.06.29宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授)

はじめに

 「測定とはすべての科学の基本である」という言葉を聞いたことがありますでしょうか? どのような素晴らしい目的、デザインの研究であっても、その根底である「測定」に問題があれば、研究の妥当性も信頼性も揺らぐことになるでしょう。統計学の教科書は通常、確率論や確率分布から始まることが多いのですが、学生のときに「評価尺度の信頼性の分析方法」から始まっていた本があり、その哲学に感激した記憶があります。
 第6回で研究デザインについての講義が終わり、次回からは統計学に移るのですが、統計学を学ぶ前に、研究の評価方法について1回話したいと思い、この回を入れてあります。なお、この回はまだ研究デザインの続きですので、評価尺度の信頼性・妥当性などの統計的事項は扱わず、研究を評価する方法に内容を絞っています。また、学生が行う卒業研究にはアンケート調査やその分析が比較的多いですし、看護師になってからもアンケートに携わる機会は少なからずあると思いますので、アンケートの作り方についても話しています。

主要・副次的エンドポイントについて知ってもらう

 まず、最初に主要・副次的エンドポイントの概念について話します。導入としては「軽症のCOVID-19の治療薬の臨床試験を考えるときに、あなたなら、どのような項目で評価をするか」から入ります。軽症のCOVID-19の臨床試験では主要エンドポイントを発熱や咳などの呼吸器症状の回復期間、副次的エンドポイントをウイルス量などにしていた試験が多い印象ですが、ウイルス量は大幅に減らすが臨床症状はあまり改善しないという研究も多かったと思います。

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宮下 光令

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授

みやした・みつのり/東京大学医学部保健学科卒業、看護師として臨床経験を経て、東京大学にて修士・博士を取得。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻助手、講師を経て、2009年10月より現職。日本緩和医療学会理事、日本看護科学学会理事、日本ホスピス緩和ケア協会副理事長。専門は緩和ケアの質の評価。主な編著書は「ナーシング・グラフィカ 成人看護学6 緩和ケア」(メディカ出版)、「緩和ケア・がん看護臨床評価ツール大全」( 青海社)など。

企画連載

宮下光令の看護研究講座「私はこう教えている」

 この連載は、私が担当している学部2年生の「看護研究」の講義の流れに沿って進めていきます。私の講義では、“判断の根拠となる本質的な点は何か”ということを中心に伝えています。あくまで私の経験に基づく、私はこう考えている、ということを解説していますので、読者の皆様には「個人の独断と偏見に基づくもの」と思っていただき、“学部生にわかりやすく伝えるにはどうすればよいか”を重視した結果としてお許しいただければと思います。自由気ままに看護研究を語り、そのことが何かしら皆様の看護研究を教える際のヒントになるのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

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