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第14回:自他へのいたわり

第14回:自他へのいたわり

2022.08.23安保 寛明(山形県立保健医療大学 教授)

 大人になると、脳自体の発達や成熟というよりは工夫による成熟を扱うようになってきています。前回(第13回)は感情を認知する機能と複雑な感情を認知していくための周囲の人の助けについて紹介しました。さて、第14回の今回は、いよいよ「自他へのいたわり」をキーワードに、脳と心の機能を維持することに焦点を当てます。気晴らしとストレス対処法の違いについて紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

情報過多による脳疲労と衝動性

 時間とともに成長を続けてきた人間の脳ですが、前頭前皮質(前頭前野)の機能の成長が明確であるのは25歳くらいまでで、そこからは脳の機能自体が成長していくわけではありません。高度な情報処理能力を持っている人間の脳であっても、無制限に多量の情報を解釈して処理し続けることができるわけでもないのです。そのため、第12回で紹介した通り、脳も負担が大きい状態が続くと疲労がたまります。
 また第12回では、脳の活動性が低下してきた時に生じる抑うつ気分を紹介しましたが、脳の活動性の低下によって生じやすいもう1つの状態に、「衝動性」があります。「衝動性の高い状態」というのは、「大脳新皮質による計画立てた行動や論理的思考が及ぶ前に意思決定や行動が開始してしまう状態」ということができます。どのようにしてこの状態に陥るのか、簡単に述べたいと思います。

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安保 寛明

山形県立保健医療大学 教授

あんぼ・ひろあき/東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、同医学系研究科博士課程修了(保健学博士)。岩手県立大学助手、東北福祉大学講師、岩手晴和病院(現・未来の風せいわ病院)社会復帰支援室長、これからの暮らし支援部副部長を経て2015年より現所属、2019年より現職。日本精神保健看護学会理事長、日本精神障害者リハビリテーション学会理事。著書は『コンコーダンス―患者の気持ちに寄り添うためのスキル21』(2010、医学書院)[共著]、『看護診断のためのよくわかる中範囲理論 第3版』(2021、学研メディカル秀潤社)[分担執筆]など。趣味は家族団らん。

企画連載

人間の知的発達と精神保健

長年にわたり精神保健に携わってきた筆者が、人の精神の発達過程や、身体と脳の関係、脳と精神の関係、今日的な精神保健の課題である「依存症」や「自傷他害」、職場における心理学、「問題行動」や「迷惑行為」といった社会問題となる行為など、多様なテーマについてわかりやすくひも解いていきます。

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