大人になると、脳自体の発達や成熟というよりは工夫による成熟を扱うようになってきています。前回(第13回)は感情を認知する機能と複雑な感情を認知していくための周囲の人の助けについて紹介しました。さて、第14回の今回は、いよいよ「自他へのいたわり」をキーワードに、脳と心の機能を維持することに焦点を当てます。気晴らしとストレス対処法の違いについて紹介していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
情報過多による脳疲労と衝動性
時間とともに成長を続けてきた人間の脳ですが、前頭前皮質(前頭前野)の機能の成長が明確であるのは25歳くらいまでで、そこからは脳の機能自体が成長していくわけではありません。高度な情報処理能力を持っている人間の脳であっても、無制限に多量の情報を解釈して処理し続けることができるわけでもないのです。そのため、第12回で紹介した通り、脳も負担が大きい状態が続くと疲労がたまります。
また第12回では、脳の活動性が低下してきた時に生じる抑うつ気分を紹介しましたが、脳の活動性の低下によって生じやすいもう1つの状態に、「衝動性」があります。「衝動性の高い状態」というのは、「大脳新皮質による計画立てた行動や論理的思考が及ぶ前に意思決定や行動が開始してしまう状態」ということができます。どのようにしてこの状態に陥るのか、簡単に述べたいと思います。