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第18回:安静時間とストレスチェックの必要性―日々を前向きに過ごすために

第18回:安静時間とストレスチェックの必要性―日々を前向きに過ごすために

2022.10.25安保 寛明(山形県立保健医療大学 教授)

 この連載では、人間の知的発達とメンタルヘルスの関係について述べてきています。ここ数回は社会性や社会システムの発展を扱いつつ、成人で社会集団に属する人のメンタルヘルスに焦点をあてて、ストレスモデルや社会構造との関係から社会集団における心の健康について述べてきました。
 この回では、まず脳の機能を脳内ネットワークの種類から整理して、自分の心の健康状態を知ることの大切さと、脳の健康増進のために有効な活動や考え方について述べたいと思います。

 

安静時間の必要性

 読者の皆さんも、「睡眠中に記憶が定着する」ということは聞いたことがありませんか? 実際に、睡眠中の脳はワーキングメモリ(⇒第12回参照)などに一時保存された記憶を、長期記憶へと変換することがわかってきています。脳の健康やメンタルヘルスにおいて、睡眠は大変重要な意味を持っているのですが、睡眠と同様に重要な時間の使い方として、「安静時間」というものを扱いたいと思います。

 皆さんは、起きているのにボーっとしている時間を幸福に感じたことはありませんか? たとえばコーヒーを飲みながら遠くを見てぼんやりしたり、読書をしている時に途中で本から視線を外して読書に関連した思い出や想像に頭を巡らせたり、自転車や徒歩で風を感じるだけの時間をとってみたり、温泉に入ってゆっくりしてみたり。このような時間は「安静時間」とよばれます。また、起きていながらボーっとしている時間に、新しいアイデアが浮かんだり、自分の気持ちが整理されたりすることはありませんか? ここで述べたような脳の活動は、いわゆる計算や順序立てた行動を行う時とは別の活動が起きているのです。

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安保 寛明

山形県立保健医療大学 教授

あんぼ・ひろあき/東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、同医学系研究科博士課程修了(保健学博士)。岩手県立大学助手、東北福祉大学講師、岩手晴和病院(現・未来の風せいわ病院)社会復帰支援室長、これからの暮らし支援部副部長を経て2015年より現所属、2019年より現職。日本精神保健看護学会理事長、日本精神障害者リハビリテーション学会理事。著書は『コンコーダンス―患者の気持ちに寄り添うためのスキル21』(2010、医学書院)[共著]、『看護診断のためのよくわかる中範囲理論 第3版』(2021、学研メディカル秀潤社)[分担執筆]など。趣味は家族団らん。

企画連載

人間の知的発達と精神保健

長年にわたり精神保健に携わってきた筆者が、人の精神の発達過程や、身体と脳の関係、脳と精神の関係、今日的な精神保健の課題である「依存症」や「自傷他害」、職場における心理学、「問題行動」や「迷惑行為」といった社会問題となる行為など、多様なテーマについてわかりやすくひも解いていきます。

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