はじめに
今回から量的研究のデザインの話に入ります。
エビデンスの信頼度のピラミッド(図1)の上から順に行くのですが、メタアナリシス・システマティックレビューはさまざまな知識が必要なので後に回して、ランダム化比較試験から入って介入研究の話をします。
介入研究は次のスライド(図2)の内容を話しますが、1回では話しきれないのでこの回ではランダム化クロスオーバー試験、クラスターランダム化試験まで話します。
「3た論法」にご用心―まず比較の重要性から始める
ランダム化比較試験の説明に入る前に、初回で話した「脚気論争」の話などから、比較の重要性をもう一度話します。また、臨床試験のPhaseの話をもう一度行い、Phase IIIのランダム化比較試験を経て初めて薬が承認されることを話します。
そして、いわゆる「3た論法」(使った、治った、効いた)はダメだということを話します。よく使う例は、過去に日本茶に関する商品を販売している会社が「MRSA保菌者にカテキンを含んだ生理食塩水をネブライザー吸入したところ、MRSAが消失した」という研究を発表していたのですが、全身状態が良くなったり、食事を食べられるようになったりするとMRSAは自然に消失していくものですから、そのような自然治癒ではない効果を示すためには「比較」が必要であり、そのいちばん強力な方法はランダム化比較試験だというふうに話していきます(図3)。
いちばんシンプルなランダム化の例です。対象集団を2群にランダムに割り付け、それぞれの群で治療経過を追跡していきます。