看護教育のための情報サイト NurSHARE つながる・はじまる・ひろがる

第4回 ランダム化比較試験はこう教えている

第4回 ランダム化比較試験はこう教えている

2023.03.30宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授)

はじめに

 今回から量的研究のデザインの話に入ります。
 エビデンスの信頼度のピラミッド(図1)の上から順に行くのですが、メタアナリシス・システマティックレビューはさまざまな知識が必要なので後に回して、ランダム化比較試験から入って介入研究の話をします。

図1
 
 
 

 介入研究は次のスライド(図2)の内容を話しますが、1回では話しきれないのでこの回ではランダム化クロスオーバー試験、クラスターランダム化試験まで話します。

図2
 

 

 

「3た論法」にご用心―まず比較の重要性から始める

 ランダム化比較試験の説明に入る前に、初回で話した「脚気論争」の話などから、比較の重要性をもう一度話します。また、臨床試験のPhaseの話をもう一度行い、Phase IIIのランダム化比較試験を経て初めて薬が承認されることを話します。
 そして、いわゆる「3た論法」(使った、治った、効いた)はダメだということを話します。よく使う例は、過去に日本茶に関する商品を販売している会社が「MRSA保菌者にカテキンを含んだ生理食塩水をネブライザー吸入したところ、MRSAが消失した」という研究を発表していたのですが、全身状態が良くなったり、食事を食べられるようになったりするとMRSAは自然に消失していくものですから、そのような自然治癒ではない効果を示すためには「比較」が必要であり、そのいちばん強力な方法はランダム化比較試験だというふうに話していきます(図3)。

図3

いちばんシンプルなランダム化の例です。対象集団を2群にランダムに割り付け、それぞれの群で治療経過を追跡していきます。 

 

会員登録(無料)いただくと、この記事の全文を読むことができます。

宮下 光令

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授

みやした・みつのり/東京大学医学部保健学科卒業、看護師として臨床経験を経て、東京大学にて修士・博士を取得。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻助手、講師を経て、2009年10月より現職。日本緩和医療学会理事、日本看護科学学会理事、日本ホスピス緩和ケア協会副理事長。専門は緩和ケアの質の評価。主な編著書は「ナーシング・グラフィカ 成人看護学6 緩和ケア」(メディカ出版)、「緩和ケア・がん看護臨床評価ツール大全」( 青海社)など。

企画連載

宮下光令の看護研究講座「私はこう教えている」

 この連載は、私が担当している学部2年生の「看護研究」の講義の流れに沿って進めていきます。私の講義では、“判断の根拠となる本質的な点は何か”ということを中心に伝えています。あくまで私の経験に基づく、私はこう考えている、ということを解説していますので、読者の皆様には「個人の独断と偏見に基づくもの」と思っていただき、“学部生にわかりやすく伝えるにはどうすればよいか”を重視した結果としてお許しいただければと思います。自由気ままに看護研究を語り、そのことが何かしら皆様の看護研究を教える際のヒントになるのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

フリーイラスト

登録可能数の上限を超えたため、お気に入りを登録できません。
他のコンテンツのお気に入りを解除した後、再度お試しください。