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第20回:衰えと喪失を抱えて生きる

第20回:衰えと喪失を抱えて生きる

2022.12.06安保 寛明(山形県立保健医療大学 教授)

 人の知的発達とメンタルヘルスについて扱ってきたこの連載も、この回でついに20回となります。前回から人生の終盤を扱っていますが、いよいよ人生の店じまいを想定した人の精神性に関することをいくつか紹介していきます。
 成長や発達を続けてきた青年期や、心身の成熟や推察によって対応してきた壮年期を経て、いよいよ心身の機能の衰えに加え社会的つながりを減らしていく時期を扱っていきます。

 

脳の機能の衰え

 老年期には脳の機能も低下していき、とくに認知機能の低下によって、いわゆる認知症の状態になる人の割合も増加していきます。たとえば、東京都健康長寿医療センター研究所が行った調査では、 CDR(臨床的認知症尺度:Clinical Dementia Rating)による判定によって、東京都在住の百寿者における認知症有病率を推計したところ、 61.9%がCDRの評価によって認知症であると推計されています。ちなみに85歳から89歳の方々のおよそ40%が認知症であると推定されていますので、老いに伴う脳の機能低下はそれなりに多くの人に訪れるものと考えることができます。
 なお、脳の機能のうちでも衰えやすい機能とそうでない機能があることがわかってきています。たとえば記憶の機能では、海馬が中心的な役割を果たしている短期記憶の機能は老化に伴って低下しやすいのですが、大脳皮質が中心的な役割を担っている長期記憶はあまり喪失されないことがわかっています。

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安保 寛明

山形県立保健医療大学 教授

あんぼ・ひろあき/東京大学医学部健康科学・看護学科卒業、同医学系研究科博士課程修了(保健学博士)。岩手県立大学助手、東北福祉大学講師、岩手晴和病院(現・未来の風せいわ病院)社会復帰支援室長、これからの暮らし支援部副部長を経て2015年より現所属、2019年より現職。日本精神保健看護学会理事長、日本精神障害者リハビリテーション学会理事。著書は『コンコーダンス―患者の気持ちに寄り添うためのスキル21』(2010、医学書院)[共著]、『看護診断のためのよくわかる中範囲理論 第3版』(2021、学研メディカル秀潤社)[分担執筆]など。趣味は家族団らん。

企画連載

人間の知的発達と精神保健

長年にわたり精神保健に携わってきた筆者が、人の精神の発達過程や、身体と脳の関係、脳と精神の関係、今日的な精神保健の課題である「依存症」や「自傷他害」、職場における心理学、「問題行動」や「迷惑行為」といった社会問題となる行為など、多様なテーマについてわかりやすくひも解いていきます。

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