看護教育のための情報サイト NurSHARE つながる・はじまる・ひろがる

第13回:整理整頓から組織改革に必要なスキルが生まれる

第13回:整理整頓から組織改革に必要なスキルが生まれる

2026.10.02山中 真弓(活水女子大学看護学部 学部長)

 私はいくつもの看護学校で勤務させていただき、そのたびに教材教具の整理整頓や文書の整理、データの保管方法の整理などに取り組んできました。今回は、このことが組織にとっていかに大切であるか、ということをお伝えしたいと思います。

どのように「整理整頓」すればいいのか

 みなさんの多くは、子どものころから「片付けなさい」と言われて育っておられるのではないでしょうか。しかし、整理整頓が必要なことであるとはわかっていても、なぜ整理整頓するのか、どうやって整理整頓するのかということへの考え方は、人それぞれかもしれません。私も子どもたちに「整理整頓しなさい」と言って育てていましたが、成人するまでは片付けができませんでした。小中学生の頃の彼らの片づけは、右にあったものが左に移動しただけで、結局必要な物を無くし、時間をかけて探さないといけないような状態が続きました。当時は3ヵ月に一度、ごみ袋を持って一緒に整理整頓することになっていました。子どもが高校生になってからは、そもそも整理整頓の仕方がわからないのかな? と思い、「分類しなさい」という言葉に変えました。すると、毎日こそ無理でしたが、まとまった日に自分のものを分類し整理するようになりました。成人してからは、部屋の中がすっきりし、掃除も行き届き、同じ人物かな、と思うほどです。どこに何があるのかがわかり、必要な物がそろうようになりました。
 このように、整理整頓の必要性はわかっていても実際にどうやるのかがわからないからできない、ということは多いのではないでしょうか。

整理整頓がされていない組織では働きにくい

 組織においては、長年の習慣で物品を同じ場所に置いているとか、新たな物品を「後で置き場を決めるから」ととりあえず置いておいたところ、気づけばずっとその場所にあるというような状況が大いにあります。使用期限が切れているなど廃棄すべき物品もそのままいつもの場所にあったり、廃棄物品を集めて置く場所を決めているにもかかわらず、それが永遠に廃棄されないなんてこともあるのではないでしょうか。データの保存も同じです。ファイルの命名ルールがなく、それぞれの感性でファイル名を付けているため、共有フォルダに保存してあってもそのデータを探すのに時間を要するということが多いのではないでしょうか。文書管理であれば、内容ごとにファイリングしてあり、ファイルが数多くなり探すのに時間がかかることがあります。新たな文書や資料をどのファイルに綴じればいいのかわからなくなることも少なくありません。

みんなで取り組み、試行錯誤することが整理整頓のキモ

 私は時間をとても大切にしているので、ものを探す時間が長くなるという状態はストレスです。また、あちらこちらから教材を集めるというのも時間と労力の無駄だと思っています。だからと言って自分の価値観を押し付けるわけではありません。私の場合、新たな学校に着任したら、まずは教材教具の収納のあり方について時間をかけて観察します。教材教具の管理リストはあるか、そのリストの項目はどうなっているか、物品とリストは合っているか。教員は探すという動作をしていないか、動き回って物品を集めていないか。収納は誰に見られてもいい状態か、ということを1年前後観察します。
 その後、一人ひとりに現状をどのように考えているかを聞きます。多くの人は「何も意見はない」と答えますが、2~3人は、やりづらさや居心地の悪さを感じています。その2~3人を見つけられたら、その人たちと一緒にどうすればいいかを考えます。整理整頓の目的や考え方を整理し、おおまかなルールを決め、会議で説明し、承認を得ます。そして、整理整頓をする日を決めて全員で取り掛かります。もちろん、私も参加します。
 その日一日の整理整頓が終わると、必ず「すっきりしました」「この状態が保てるようにします」という言葉が聞かれます。また、整理整頓中も、全員が話し合いながら取り組んでいます。それぞれが一人黙々と取り組んでいる姿はどの組織でも見たことがないです。その理由は、ルールをきっちりと決めないようにしているからです。最初の時点ではざっくりとしたルールを決めて、整理整頓しながら決めましょう、としているからです。整理整頓には「これで大丈夫」ということはありえません。まずは概ねこんな感じでやってみよう、で大丈夫です。業務をやりながら、みんなで試行錯誤していくことが大切だと思います。

整理整頓から生まれ、身につく組織改革のスキル

 整理整頓をみんなでするということからは、組織運営にとってとても大切なことが生まれると思っています。まず、整理整頓するという目標に向かって、職員にコミュニケーションが生まれます。普通に仕事をするうえで、整理整頓への各自の考え方を話すことはまずありません。しかし、子どものころから植え付けられている「整理整頓しなさい」ですから、皆さん何らかの経験や考え方を持っていて、とても興味深いです。また、整理整頓には改善する、分類するという思考が含まれていますから、問題解決思考がフルに回転している状態です。色々なアイデアも生まれるようになります。廃棄する、捨てるという決断からは勇気が生まれます。整理整頓を通して組織改革のスキルが生まれ、身についていくと考えています。
 この場における管理者の役割は、よく観察し、方向性を示し、リーダーシップをとる人とともに考えることです。そして、整理整頓はみんなで一緒にするということを示すこと。取り組み始めは変化が見え、モチベーションにつながりやすいですが、少しずつ変化が見えなくなると、以前の組織に逆戻りします。管理者は、見えない変化を発見し伝えたり、整理整頓を定期的に繰り返すイベントを促したりする必要があります。
 環境が変わると周囲の見え方が変わり、考え方が変わることもあります。もし、組織改革に困っていたら、まずは整理整頓に皆さんで取り組んでみられてはいかがでしょうか。

山中 真弓

活水女子大学看護学部 学部長

やまなか・まゆみ/国立療養所再春荘病院附属看護学校卒業。国立病院再春荘病院に勤務後、教員となり、その傍ら熊本学園大学社会福祉学部を卒業。厚生労働省幹部看護教員養成講習会を修了し、国立病院機構附属看護学校の教育主事や副学校長。その傍ら福岡大学大学院人文科学研究科教育・臨床心理専攻修了(教育学修士)。厚生労働省九州厚生局でも勤務。2025年4月より現職。休日の楽しみは娘とのショッピングやアニメ鑑賞。

フリーイラスト

登録可能数の上限を超えたため、お気に入りを登録できません。
他のコンテンツのお気に入りを解除した後、再度お試しください。