今回は、部下である教員に伝えたいことが伝わらないという悩みを書かせていただきます。
私は上司として、授業の展開や授業資料の作成について、他の教員にアドバイスすることが数多くあります。しかし、そのアドバイスの主旨が伝わっていないことがあると、結果相手の教員はそのまま授業をすることとなります。そして、授業を受けた学生の反応がよくないということがあります。教育の責任は、私にありますので、とても悩みます。
なぜ、伝わらないのかと試行錯誤することが多くあります。最近では、伝え方を工夫し、図に書いて伝えたり、伝えたことを相手がどう理解したか話してもらい確認するなどしています。しかし、結果として、想像と違うものが表れることがあります。別の方法として、メールなどの文字でやり取りする方法も取り入れました。丁寧な文章ではありますが、何が言いたいのか伝わってこず、こちらの文章も言葉尻だけが伝わっているようです。
みなさんはこういうとき、どのように取り組んでいますか。
伝えたい内容があやふやなら、届け方を磨いても伝わらない
この悩みを打破したいと思い、今いくつかの関連する書籍を読んでいますが、今回は小暮太一氏著『すごい言語化』をご紹介します。拝読した結果を自分なりに解釈しましたので書かせていただきます。
この本を読んでみてまず気づかされたのが、自分は「どう伝えるか」というHowを考えていたということです。上にも書いたような、伝え方の工夫ばかりを考えていました。しかし、大事なことは、「何を伝えるか」ということです。「どう伝えるか」のHowが活きるのは、伝えたい内容が整っている場合のみで、伝えたい内容があやふやな場合は、届け方を磨いても伝わらないようです。このことから、私が「相手に伝わらない」という現象は、私が何を伝えるのか明確にしていなかったということです。
「伝わらなかった」出来事を改めて振り返ってみる
これを踏まえて、以前、教員に行ったアドバイスが「伝わらなかった」出来事があり、今でもどうすればよかったのか心に残っていることを振り返ってみました。
「プロセスレコードを使って、学生が自己の振り返りをできるように教授する」という授業について検討している事例です。自己の振り返りを苦手とする傾向がある学生が多くなっていることから、どのように振り返ればいいのか、実際にプロセスレコードを書かせてみて実践できるようになることを目標にしていました。授業担当の教員は、プロセスレコードの実際が書かれている資料と、プロセスレコードを使用するに至った事例場面を考察が書かれている資料を提示しました。これで説明します、ということでした。私は、「この資料ではどのように振り返るかがわからない」と言い、「プロセスレコードの項目のうち“患者の言動”“私の感じたこと・考えたこと”“私の言動”を横の流れ(時の流れ)やそれぞれの項目で読んで、アレ? と思うような矛盾や不一致があるなと思う箇所を中心に、なんでその矛盾が生じたのかな? と考えるようにすると、それが振り返りになるし、“取り上げた理由”に対して考えさせるとそれが出来事の考察になるよ」と伝えました。その際に図にも書きました。サポートに入る他の教員たちは私のアドバイスの主旨を理解しているようでしたし、本人からも「わかりました」と言われたので安心していました。
しかし、結局その教員は最初に提示した資料を変えず、授業をしていました。その後、学生に「実習の場面をプロセスレコードに書き振り返りましょう」と指示していましたが、書かれたものを読んでみると、振り返り、考察することができていませんでしたので、学生に個別に指導することになりました。その後教員に、なぜアドバイスをしたことが活かされていないのか尋ね、同じアドバイスを繰り返しました。その教員は、「そういうことでしたか」という反応でした。
言語化の法則を用いて考えると……
今、文字で書いてみても思いますが、上記のアドバイスでは伝えたい内容が不明瞭ですよね。どうすればよかったのでしょうか。そこで先述の『すごい言語化』を読み解いてみました。
この書籍では、何のために言語化するのか、何を伝えれば明確に言語化できるのか、その項目はどういう意味なのかを定義し、意図した定義が伝わるフレーズを使う、という「PIDAの4法則」で言語化するための法則を説明しています。そして「伝えるべき項目」を明確にするため、「ビジネスの言語化に必要な5段階項目」が示されています。第1段階が「提供する価値の言語化」、第2段階が「他社との差別化の言語化」、第3段階が「自社の信頼性の言語化」、第4段階が「価値が提供される理屈の言語化」、第5段階が「相手に取ってもらいたい行動の言語化」です。これを看護教育に置き換えて考えてみました。第1段階が「看護としての価値の言語化」、第2段階が「価値があると考える私の思いの言語化」、第3段階は「看護の効果の言語化」、第4段階が「文献を根拠とした言語化」、第5段階は「とってもらいたい行動の言語化」となりました。
このことから、先ほどの事例を考えてみたいと思います。プロセスレコードを使って学生が自分の振り返りができるように教授する、という授業については、「他者とのコミュニケーション場面から、自己の振り返りができる」ということを目的としていました。一方で担当の教員には、振り返りができることの看護としての価値(第1段階)や自分がなぜそのように考えるのか(第2段階)を伝えられていませんでした。また、そのことの価値をウィーデンバックの看護理論を根拠として説明する(第3段階、第4段階)ことを私はしていませんでした。この状態で、第5段階の「とってもらいたい行動の言語化」のみ実践していたために、私の言語化は相手にうまく伝わっていなかったのだと思います。
また、この教員は、プロセスレコードの実際が書かれている資料とプロセスレコードを使用するに至った事例場面を考察している資料を提示していましたが、振り返りの方法によりフォーカスするため、学生に対してはプロセスレコードの実際が書かれている資料だけを使って、振り返りをしてみせればよかったのかもしれません。
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このように考えている現在ですが、相手に伝わらないというジレンマは、これからも延々と続くように思いますので、もう少し勉強し考えを深めていきたいと思います。皆様からもアドバイスがありましたらよろしくお願いします。



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