朝夕の空気に、少しずつ秋の深まりを感じるころとなりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
少し前になりますが、7月に本学の大講堂で、2年生の「看護の思いを新たにする式」が行われました。初めて患者さんを受け持つ実習を前に、看護への思いを新たにし、自分たちが目指す看護を言葉にして、その決意を確かめる日です。私も教員として参加しました。
青いストライプの制服に身を包んだ学生たちが、段状のステージに並びます。厳かな雰囲気のなか、「ともしびの継承」で一人ひとりの手元に火が灯っていきます。普段、教室で会うときとは少し違う、引き締まった表情をしていました。
私が学生だったころ、この式は「戴帽式」と呼ばれていました。名称や形には時代とともに変化がありますが、実習を前にして看護への思いを確かめる大切な節目であることは、今も変わっていません。
[生成AIにて筆者作成]
式の際には、学生がそれぞれ「どのような看護師になりたいか」を綴ったものをまとめた冊子も配られました。そこには、一人ひとりの言葉で、それぞれが思い描く看護師像が記されていました。
同じ教室で学ぶ「2年生」といっても、看護を志した理由も、これまで歩んできた道も、これから目指す場所も異なります。冊子をめくりながら、目の前にいるのは単なる学生の集団ではなく、それぞれの職業人生を歩き始めようとしている一人ひとりなのだと、あらためて感じました。
節目に立ち会う
式に参加していて、私はどこか結婚式に立ち会っているときに似た感覚を覚えました。もちろん、式の目的はまったく異なります。ただ、そこにいる一人の人が、それまでとは違う段階へ踏み出していく。その節目に立ち会い、これから始まる長い時間に思いを馳せる。その感覚が、どこか重なったのです。
目の前の学生たちは、これから実習に出て、患者さんと出会います。思うように話せなかったり、自分の知識不足に気づいたり、看護の難しさに立ち尽くしたりする日もあるでしょう。そうした経験を重ねながら、少しずつ看護師になっていきます。
式の一日だけで、突然何かが大きく変わるわけではありません。それでも、さまざまな節目を一つずつ通り、そのたびに自分が進もうとする方向を確かめることには、意味があるのだと思います。
教員として式を見守りながら、私は学生たちのこれからに少しだけ触れさせてもらっているような気持ちになりました。
一枚の写真が連れてきた、20年前の私
式からしばらくたったある日、一枚の古い写真を見つけました。2005年頃、大学2年生だった私が戴帽式に参加したときの写真です。今の学生たちと同じ青いストライプの制服を着て、ろうそくに火を灯しています。
写真の私は、驚くほど真剣な表情をしています。「看護師になる覚悟を固めていた」と言えれば格好がよいのですが、実際には、目の前の火を消さないことに必死だったのかもしれません(笑)。それでも、これから実習で患者さんを受け持つのだという緊張のなかで、自分の気持ちに一本の筋が通ったような感覚は残っています。
写真の中の私は、その後、ICUで長く働くことも、専門看護師になることも、ましてや母校の教員として学生たちの式を見守ることも知りません。目の前の実習や課題で精いっぱいだったはずです。
あれから約20年……。長いようであり、あっという間だったような気もします。さて、これから先の20年、私はどうなっていることやら……。
写真は、時間と空間を超えて
私は修士課程で、ICUのベッドサイドに置かれた写真に関する研究に取り組みました。写真は、時間や場所を超えて、今、目の前に現れます。それを見ることで、当時の感情や、その前後にあった出来事、時間のなかに埋もれていた語りが引き出されることがあります。
今回、若いころの自分の写真を見ただけでも、その力をあらためて感じました。写真に残っているのは、火を灯している一瞬だけです。しかし見ていると、その前後にあった実習への不安や期待がよみがえり、そこから今日まで歩んできた約20年へと、自然に思いがめぐりました。
そして、写真の中の自分と、今目の前にいる学生たちの姿が重なりました。このことで、教員として学生を見るまなざしが、少し変わった気がします。教室で見える時間だけを頼りに、私はつい「この学生はこういう人だ」と分かったつもりになっていたのかもしれません。けれど、自分がICUで長く働くことになるとは、そして母校の教員になるとは、20年前の私も、周囲の誰も予想だにしていませんでした。今見えている姿は、その人の長い道のりの、ほんの一場面にすぎないのです。
思いを新たにしたのは、私もでした
この式は、これから実習へ向かう学生たちのためのものです。しかし、看護への思いを新たにしたのは、学生だけではありません。学生一人ひとりの職業人生の入口に、教員として立ち会わせてもらっている。そのことを、私自身もあらためて胸に刻みました。
毎日の教育現場では、あれができていない、これもまだだと、つい足りないところに目が向きがちです。そんなときこそ、ときどき立ち止まり、学生の先に、まだ誰にも見えていない長い未来があることを思い出したいと思います。どの領域へ進み、どのような患者さんと出会い、何に悩み、何を大切にする看護師になっていくのか。それは、教員である私にも分かりません。

――と、20年前の写真を前に、ここまで思いを馳せてきました。しかし、昔の写真と今の自分を見比べて、まず目につく変化は、看護観の深まりよりも、10キロ以上増えた体型です。
ともしびは受け継がれ、体重は着実に積み重なりました(笑)。体重のほうはじっくり落としつつ、教員としての思いは、学生たちと一緒に何度でも新たにしていきたいと思います。


![第2回:実習記録デジタル化の実際 [1]―既存のLMSを用いた実装](https://www.nurshare.jp/assets/public/article/10552/【看護実習DX】_サムネイル小_1711450359171.png)


