今回からは、臨床における看護の初学者への指導力を高めることを目的とした「後輩指導シミュレーションに向けた事前ワーク」をテーマに、第4回の協働学習会をご紹介します。後輩指導シミュレーションとは、実際の臨床教育場面を再現した状況の中で、看護の教育者が学生や新人看護師への指導を実践し、その経験をリフレクションすることで、教育者としての知識・技術を高めるとともに、自らの信念や価値観などの枠組みを捉え直す(リフレーミングする)ことを目指す学習方法です。この定義が示すように、ここでの「後輩」とは学生を含みます。
本協働学習会では、第1回から第3回までに学びあってきた、学生や新人看護師への指導に関する専門的知識やスキルを活用し、看護教員と臨床指導者、新人教育を担当する実地指導者が協働して、後輩指導シミュレーションに取り組みます。実際の臨床では、学生や新人看護師の学びと患者の安全を同時に守る必要があるため、教育的な試みを自由に実践することが難しい場面も少なくありません。一方、シミュレーションでは、患者への影響を心配することなく、さまざまな指導方法を試し、その結果を振り返ることができます。たとえ期待どおりの指導ができなかったとしても、その経験を参加者同士で共有し、リフレクションを通して改善点や新たな気づきを得ることができます。
このように、後輩指導シミュレーションは、看護の教え手が教育・指導に関する知識やスキルを実際に活用するとともに、失敗からも学ぶことのできる、安全で効果的な学習の機会となります。
後輩指導シミュレーションのねらい
協働学習会は、教育理論家のユーリア・エンゲストロームの「探究的学習理論」1)と、この理論に依拠した学習サイクル「CIERモデル」2,3)の考えを参考に構想しています(図1)。
CIERモデルでは、〈コンフリクト〉→〈内化〉→〈外化〉→〈内省〉を繰り返しながら学びを深め、他者から学んだ知識やスキルを自らの実践に活用できるようになることを目指します。協働学習会における教員・指導者の学習の流れは図1のとおりです。
後輩指導シミュレーションの概要
後輩指導シミュレーションの目的、目標、概要は、図2のとおりです。
第4回協働学習会:後輩指導シミュレーションに向けたグループワーク
第4回協働学習会は、後輩指導シミュレーションに向けたオリエンテーションと机上学習を中心としたグループワークが主な内容となります。進め方は表1のとおりです。
1.後輩指導シミュレーションのオリエンテーション
後輩指導シミュレーションのグループメンバーは、指導者2~4名と教員2名の合計5名で構成されています。各グループのシミュレーションテーマは図3に示すとおりです。各実習病棟の特徴と普段受け入れている実習内容を考慮し決定しています。
まずは、自己紹介とアイスブレイクを行い、メンバー同士の雰囲気が和むようにしています。その後、次回の後輩指導シミュレーションの実施に向けたオリエンテーションを行います。オリエンテーションでは、学習目的、目標、概要(図2参照)、メンバー構成と役割、当日のスケジュール、使用する教材などを説明しています。
2.後輩指導シミュレーションに向けたグループワーク(事前机上学習)
ここでは、学生指導シミュレーションと新人指導シミュレーションの事前ワークについてご説明します。
1)学生指導シミュレーションの事前ワーク:ブリーフィングシート作成
学生指導シミュレーションに向けた事前ワークでは、設定されたテーマに即した学生指導場面のシナリオを読み、その事例に登場する学生に対して、どのような教授活動や教育的なかかわりを展開していくのかについて構想します。図4は、学生指導シミュレーションのシナリオ【1】の事例です。
ブリーフィングでは、次の2つの課題を提示しています。図5のブリーフィングシートも使用しながら、課題に取り組みます。
課題1:看護学生の教え手(指導者・教員)として、この場面における次の点を個人で考えて下さい(15分)。
① 教え手としてのねがい:この場面を通して学生にどうなってほしいですか?
② 教材化:この場面においてどのようなことが教材にできそうですか?
③ 指導言:この場面において、どのような発問、助言、指導、フィードバックができそうですか?
④ 学習環境:臨床で効果的に学べるようにどのような雰囲気や環境づくり、配慮をおこないますか?
課題2:課題1についてグループ内で共有し、意見交換をしてください。(15分)
2)新人指導シミュレーションの事前ワーク:ブリーフィングシート作成
グループワークでは、設定されたテーマに即した新人指導場面のシナリオを読み、その事例に登場する新人看護師に対して、どのような教授活動や教育的なかかわりを展開していくのかについて構想します。ブリーフィングでは、次の2つの課題を提示しています。
課題1:実地指導者(新人教育係)として、この場面における次の点を個人で考えて下さい(15分)。
① 教え手としてのねがい:この場面を通して新人看護師にどうなってほしいですか?
② 教材化:この場面においてどのようなことが教材にできそうですか?
③ 指導言:この場面において、どのような発問、助言、指導、フィードバックができそうですか?
④ 学習環境:効果的なリフレクションができるようにどのような雰囲気や環境づくり、配慮をおこないますか?
課題2:課題1についてグループ内で共有し、意見交換をしてください。(15分)
図6は、新人指導シミュレーションのシナリオ【1】の事例です。
まとめ
今回は、後輩指導シミュレーション演習に向けた事前ワークの進め方についてご紹介しました。後輩指導シミュレーションでは、この準備のプロセスを通して、教え手としてのねがいや指導方略を整理し、グループで共有しておくことが重要となります。次回は、今回の準備をもとに実施した学生・新人看護師への後輩指導シミュレーションの実際について、ご紹介します。
1) ユーリア・エンゲストローム:変革を生む研修のデザイン-仕事を教える人への活動理論-(松下佳代, 三輪建二訳),鳳書房, 2010
2) 佐藤佐敏:国語科の学びを深めるアクティブ・リーディング <読みの方略>の獲得と<物語の法則>の発見Ⅱ, 明治図書出版, 2017
3) 松下佳代:資質・能力とアクティブ・ラーニングを捉えなおす なぜ、「深さ」を求めるのか.深い学びを紡ぎだす─教科と子どもの視点から(グループ・ディダクティカ編), p.3-25, 勁草書房, 2019




![第3回:実習記録デジタル化の実際 [2]―導入における課題とその対応を中心に](https://www.nurshare.jp/assets/public/article/10553/【看護実習DX】_サムネイル小_1711450359171.png)