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第5回 “ランダム化”の続きとその他の介入研究はこう教えている

第5回 “ランダム化”の続きとその他の介入研究はこう教えている

2023.04.27宮下 光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授)

はじめに

 第5回目の講義は前回の続きで、ランダム化比較試験の続きを話したのちに、ランダム化を伴わない介入研究の話をします。医学研究において重要なことは「比較」することです。ランダム化比較試験はその意味で最も因果関係を強く主張できますが、リクルートが容易でないことなどさまざまな制約があります。そこで、前回のランダム化クロスオーバー試験、クラスターランダム化試験に続いて、看護研究でも実施可能な変法について説明していきます(図1)。

図1
 
 
 

要因実験について

 要因実験とは複数の介入を同時に行う試験です。図2はフィンランドで行われたATBC試験という、男性喫煙者に対してビタミンAとビタミンEの肺がん予防効果を検証した試験です1)。ビタミンEは肺がん予防効果がなく、ビタミンAは肺がんを逆に20%程度増加させたという衝撃的な結果でした。

図2

 

 

 

 要因実験は2つの介入でしたら対象を2×2の4群に分けます。ATBC試験ではビタミンAとビタミンEの有無(無はプラセボ)で4群が設定されました。要因試験は2つの介入を同時に行うことで、相互作用を検証することができます(たとえばビタミンAとビタミンEを併用するとそれぞれの単独の効果の和より強い効果が得られる可能性があるが、逆に片方がもう一方の効果を抑制する可能性もある)。また、2つの試験を同時にすることができ、効率的に研究ができます。
 私も遺族調査の回収率の向上を目指して「三色ボールペンを入れる」「施設または研究班作成の封筒を使う」「研究班だけでなく施設からの依頼状を入れる」という2×2×2群の要因実験をしたことがあります。この研究ではボールペンを入れた群で回収率が高いという結果でした(大量発注するとかなり安価で購入できるものがあるのでお勧めです!)。

時期を変えた介入について

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宮下 光令

東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野 教授

みやした・みつのり/東京大学医学部保健学科卒業、看護師として臨床経験を経て、東京大学にて修士・博士を取得。東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻助手、講師を経て、2009年10月より現職。日本緩和医療学会理事、日本看護科学学会理事、日本ホスピス緩和ケア協会副理事長。専門は緩和ケアの質の評価。主な編著書は「ナーシング・グラフィカ 成人看護学6 緩和ケア」(メディカ出版)、「緩和ケア・がん看護臨床評価ツール大全」( 青海社)など。

企画連載

宮下光令の看護研究講座「私はこう教えている」

 この連載は、私が担当している学部2年生の「看護研究」の講義の流れに沿って進めていきます。私の講義では、“判断の根拠となる本質的な点は何か”ということを中心に伝えています。あくまで私の経験に基づく、私はこう考えている、ということを解説していますので、読者の皆様には「個人の独断と偏見に基づくもの」と思っていただき、“学部生にわかりやすく伝えるにはどうすればよいか”を重視した結果としてお許しいただければと思います。自由気ままに看護研究を語り、そのことが何かしら皆様の看護研究を教える際のヒントになるのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

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