はじめに
第5回目の講義は前回の続きで、ランダム化比較試験の続きを話したのちに、ランダム化を伴わない介入研究の話をします。医学研究において重要なことは「比較」することです。ランダム化比較試験はその意味で最も因果関係を強く主張できますが、リクルートが容易でないことなどさまざまな制約があります。そこで、前回のランダム化クロスオーバー試験、クラスターランダム化試験に続いて、看護研究でも実施可能な変法について説明していきます(図1)。
要因実験について
要因実験とは複数の介入を同時に行う試験です。図2はフィンランドで行われたATBC試験という、男性喫煙者に対してビタミンAとビタミンEの肺がん予防効果を検証した試験です1)。ビタミンEは肺がん予防効果がなく、ビタミンAは肺がんを逆に20%程度増加させたという衝撃的な結果でした。
要因実験は2つの介入でしたら対象を2×2の4群に分けます。ATBC試験ではビタミンAとビタミンEの有無(無はプラセボ)で4群が設定されました。要因試験は2つの介入を同時に行うことで、相互作用を検証することができます(たとえばビタミンAとビタミンEを併用するとそれぞれの単独の効果の和より強い効果が得られる可能性があるが、逆に片方がもう一方の効果を抑制する可能性もある)。また、2つの試験を同時にすることができ、効率的に研究ができます。
私も遺族調査の回収率の向上を目指して「三色ボールペンを入れる」「施設または研究班作成の封筒を使う」「研究班だけでなく施設からの依頼状を入れる」という2×2×2群の要因実験をしたことがあります。この研究ではボールペンを入れた群で回収率が高いという結果でした(大量発注するとかなり安価で購入できるものがあるのでお勧めです!)。