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【座談会】「新・学生支援」を考える(3) : 教員コミュニティで支え合う

【座談会】「新・学生支援」を考える(3) : 教員コミュニティで支え合う

2022.05.25NurSHARE編集部

これまで本企画で共有された学生支援における課題を踏まえ、これからの学生支援として何が求められるのかを掘り下げるべく開催した、本企画プランナー・三森寧子先生(千葉大学教育学部)と3名の執筆者による座談会の様子をお届けします。

※この座談会は2022年3月25日に開催しました(ただし、本文中の学年などは2022年度に合わせています)。

<座談会 (1) はこちら
<座談会 (2) はこちら

看護教員とコミュニティ

看護教員ならではの強みをコミュニティづくりに生かす

池口:専門学校の時でいうと、教員は皆、教員室に集まって常に顔を合わせていますので、ふだんから情報共有がしやすいというのがあります。決して大きな組織ではないので、領域を越えたつながりもつくりやすいというのが専門学校の良さの一つだと思います。私が勤務していた専門学校では、教員みんなでカリキュラムを考えるために合宿をすることもありましたし、情報共有を積極的にする中で自然とコミュニティが形成されていた気がします。今、大学で思うのは、ほかの先生方とやはりそういうコミュニティをもちたいなということですね。学生の強みを共有し合ったり、何かあった時には助け合えるコミュニティを。若手の先生方をはじめ、みんながんばって学生を支えたいという中で、いかに教員間のコミュニティをつくっていくかというのはすごく大きな要素になるのだろうと期待しています。カリキュラムや授業を介して教員間で交流をもっていくということを、できるだけオープンに挑戦してみたいと個人的には思っているところです。
 

 

三森:聖路加国際大学時代に私が池口先生とつながったのは委員会活動でしたよね。成人看護学がご専門の池口先生と地域看護学の私とでは領域が異なるので研究室のフロアも離れていましたが、一緒に活動させていただくなかで、大学教育のことや学生のこと、お互いのプライベートのことなどお話しする機会がたくさんあって、そこで、「あ、この先生ならわかってくれる」という安心感から関係性が深まったという感じでした。同じ組織の中でもそれぞれの看護観、教育観、学生観があり、意見や考えが分かれることは当然ですが、池口先生とはそういった価値観を共有することができました。
 川越先生は今、看護の先生方に講演をされる機会が増えてきているとお聞きしていますが、その中で何か感じることなどありますか?

川越:まず、看護系の先生方向けに講演をしながら思うのは、講演する側としてはとても話しやすいということですね。なにしろ聞き方がお上手ですから、本当にありがたい。矢野先生もお感じになりますよね?

矢野:ものすごく共感しながら聞いてくださいますよね。

川越:そうそう、看護の先生方が元来もっていらっしゃる気質というか姿勢というか、そういうものを感じます。それがコミュニティづくりにも生きているのでしょうね。それから先ほど池口先生がおっしゃったように、比較的小さな組織だからこそ意思疎通ができているというのもあります。先生方の雰囲気として、本学の教養教育科目パッケージ制の授業でさまざまな専門分野の教員が、あの学生、最近ああだよねこうだよねと話をしている感じに似ています。私が一つ話題提供すると、「ああ、わかる、わかる。あの学生がそうだよね」と、具体的な学生の名前と顔を浮かべながら話していらっしゃるのが印象的です。ご自身の看護師としての経験による視点からも、教員としての視点からも、学生のことを丁寧に見ていらっしゃるという感じもします。そういう意味では教員コミュニティをつくりやすい環境だと思います。

三森:なるほど、それは当事者としてはあまり意識していなかった点かもしれません。

 

日頃から“つながり”を意識する

川越:学生支援のために委員会をつくるとか、話し合う時間を設けるとなると、どうしても“負担(ふたん)”の話になってしまうと思うんです。でもそうではなくて、先生方の強みを生かして“普段(ふだん)”の時間でつながりをもつことを意識するだけでも十分なのではないでしょうか。

矢野:そういうときにぜひ意識していただくとよいかなというご提案があります。コミュニケーション分野では相手と仲良くなろうとする時には、アイスブレイクとして共通の話題を出しましょう、とお伝えします。共通の話題といえば「今日は雨ですね」などお天気が簡単です。そこをあえて今回の学生支援というテーマにする。たとえば「学生たち、最近こうですね」「新入生も慣れてきたようですね」「実習、楽しそうにしていますね」とか、主語を学生にしたアイスブレイクのあいさつをするんです。そうすると、そこから教員間で認識共有ができることもあるかもしれません。自分を主語にすると「最近忙しいですよね」「なんだか負担が増えましたよね」とぼやきになってしまいますからね。

川越:私の講演でも、先生方にグループワークをしていただくことがありますが、アイスブレイクに多くの時間を割くようにしています。その中で最近あった「学生のおもしろい話」を一人1分ずつ話していただくのですが、単に学生の話というとネガティブな話題も出てくるので、あえて「おもしろい話」をつけるようにします。すると、「最近おもしろいことがあったかなあ…、どうかなあ…」と言いながら、学生が主語になった話題が次々と生まれてくるんですよね。

教員支援としても重要な教員コミュニティ

三森:教員のコミュニティやつながりというのは、学生支援という視点もありますが教員自身を支援することにもなると思っています。矢野先生は教育以外の職種から大学教員になられていますが、あらためて教員同士のつながりという点で何か感じられていることはありますか?

矢野:周りの教職員にずいぶん助けられています。私は放送局を経て大学教育にかかわらせていただいている実務家教員なので、「FDって何ですか」「ルーブリックって何ですか」というわからないことだらけからのスタートでした。ですから川越先生を文字どおり“捕まえ”させていただいて、一から質問攻めでした。川越先生にはいまだにお世話になっている状態なのですが。振り返ってみると、そういう時に教員自身が相談できる人をもつこと、人脈って改めて大事だなってすごく思うんですよね。三森先生とも、本学のFDに先生が参加してくださったことで組織を超えた人脈ができましたし、今日の座談会を機会に池口先生ともお会いできました。図々しくも、この記事を読んでくださっている先生方とのつながりも、どんどん広がっていくといいなと期待します。

川越:私が三森先生と親しくさせていただくようになったのも、養護教諭養成にかかわる会での講演に呼んでいただいたことがきっかけでしたよね。そこから連絡先を交換し、今では授業のこと、学生のこと、プライベートのことまで、何でも相談し合える仲になりましたよね。それぞれ職場が変わっても三森先生と池口先生が、矢野先生と私があたりまえのようにやりとりできていて、それぞれのつながりが、今回こうして4人のつながりになったわけで、一つの教員コミュニティの理想形だと思うんです。

矢野:みんなでつながって広げていきたいですね。

次回(4) へ続く>

NurSHARE編集部

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