やけどとは?
やけど(熱傷)は、熱によって皮膚や粘膜に起こる外傷の一つです。
皮膚や粘膜が熱いもの(炎や熱湯など)の刺激を受けて損傷した状態ですが、その他にもさまざまな原因や状態があります。
たとえば、電気や放射線による特殊な傷、化学物質による化学熱傷、そして低温による凍傷なども広義でのやけどに分類されます。
口唇は皮膚と粘膜の両方を含みますが、その他の口内は潤いをもつ粘膜に覆われるため、口のやけどの大半は粘膜のダメージと考えてよいでしょう。
看護教育でのやけどのケアの位置づけは?
◎エビデンス
2023年に報告された研究では、日本看護系大学協議会2020年会員校を対象として、看護基礎教育課程での熱傷および外傷教育の内容について、授業内容や教育する上での困難等に関するWeb調査を行いました1)。
その結果、熱傷および外傷について授業をしていたのは6割程度でかつ単回が多く、さらに、熱傷および外傷を実習の対象としていた学校はわずか3割以下でした。
一方で、授業内容としては「病態生理」「疫学」「気道・呼吸・循環・意識・体温管理」が多く取り上げられており、医学的知識と生理学的評価や対応に関する内容を重要視していることが明らかになりました。
教授する上で難しい点は熱傷および外傷で共通している、【病態そのものの複雑さ】【学生が理解するための難易度の高さ】【臨床に則した授業展開の難しさ】【学習のためのリソース不足】など、専門性の高いケアが必要とされる背景があります。そのため、半数以上の学校では困難を感じながら授業を行っていることも判明しました。
以上から、熱傷および外傷に関して看護基礎教育課程で学ぶ機会は十分とはいえず、また実際の患者に必要なケアが教育課程だけでは十分に行えない可能性がうかがわれました。
やけどの分類
やけどは「深さ・面積・部位」を総合的に判断して重症度を決めますが、損傷の深さで一般的にⅠ~Ⅲ度の3段階に分けられます。
やけどの深度分類と対応
Ⅰ度:皮膚や粘膜の表面にある表皮が赤く腫れ上がる程度のケースです。日焼けや熱湯に触れたときなどに生じます。初期対応は流水での冷却で、痛みが治まるまで患部を数分間冷やすことが基本です。
Ⅱ度:皮膚や粘膜の真皮まで損傷が及び、水ぶくれができたり皮がめくれたりするケースです。水ぶくれがつぶれると傷口から細菌感染するリスクがあるため、注意しながら優しく流水で冷やしましょう。
Ⅲ度:皮膚や粘膜の全層に損傷が及び、皮下組織までダメージを受けたケースです。速やかに医療機関で救急対応を受けてください。
口のやけどの特徴
口の中は60℃程度までは耐えられますが、70℃を超えるとやけどが起きやすくなります。とくにやけどしやすい部位は口蓋(上あご)、舌の先や裏、口唇、頬粘膜などが知られます。
口のやけどの症状には、患部に触ると痛い・ヒリヒリする、赤くなる、舌で触るとザラザラする、皮が剥ける、水ぶくれや口内炎ができる、味覚が鈍くなる、などがあります。
また、口のやけどは治りが早いと言われますが、その理由として唾液には粘膜保護作用、抗炎症作用、抗菌作用があり、傷んだ組織を修復するさまざまな成長因子などを含んでいることが挙げられます。軽症ならば大半は数日~2週間以内に治癒しますが、痛みが強い場合や症状が長引く場合は医師の診察が必要です。
ところで、口のやけどで怖いのは、さらに奥の喉まで波及するケース(喉頭熱傷)があることです。
◎エビデンス
2013年に米国で報告された調査では、各地の小児の高度医療施設で10年間に対応した口内熱傷75例のうち11例(約15%)が喉まで及び、11例のうち7例が初診時および経過中に気管挿管が必要となって、重症化するリスクが高いことが明らかになりました2)(図1)。
口のやけどの対処法
口の中のやけども体のやけどと同様に「冷やす」ことが大切で、冷やすことで皮膚や粘膜の深部へ熱が伝わるのを防ぎ、痛みも和らぎやすくなります。
口のやけどの対処法
・冷水で口をすすぐ
・できるだけ口の中を清潔にする
・やけどの患部を舌や指で触らない
・患部に食べ物が残っていたら早く取り除く
・患部を傷付けないように注意して歯を磨く
・刺激を抑えるため、歯磨剤は少なめにする
・痛みが強いときは鎮痛薬などの薬を飲む
・食事の注意点は、刺激のある食品(熱い、辛い、酸っぱい等)を避ける
・症状がある間は、軟らかくて口当たりのよい食べ物を選んで食べる(冷たくてスルッと食べられるプリンやゼリーなど)
予防も大切
口のやけどを防ぐ安全な食べ方を、いくつか提案してみましょう。
◎エビデンス
・飲食物の温度を確認してから口につける習慣
1992年にデンマークのオールボー大学のグループの研究報告では、アルゴンレーザーを使った実験を行いました。その結果、舌先や下唇皮膚部がとくに温度に敏感なことを明らかにしました3)(表1)。
つまり、口の入口である口唇や舌先で飲食物の温度を確認し、熱ければ時間を置いて少しでも冷めてから口にしましょう。
そのほかにもやけどを防ぐための方法があります。
・高齢者はやけどしやすい
高齢者の口の粘膜は若年者に比べて厚みが薄くて弱いだけでなく、温度感覚も鈍っているため、おもちのように粘膜の上で長くとどまる可能性がある飲食物は気を付けてください。
・金属製の食器は控える
金属製の容器やスプーン、フォークは熱い飲食物の熱が伝わりやすいので、耐熱性のプラスチック製や陶器(セラミック)製のものに変えるなどの工夫をしましょう。
* * *
Tさん(60歳代、男性)は「上あごがヒリヒリする」という症状で当院歯科を受診されました。口の中を見ると、左上の奥歯の内側の粘膜が赤くただれており、見るからに痛そうな状態でした。
話を聞くと「昨晩、熱々のエビフライを食べた」とのことでやけどの疑いが考えられましたが、念のため近くの歯や歯ぐきを調べても異常がなかったため、やけどと診断しました。
患部を消毒後、うがい薬や鎮痛薬などを処方し、経過を見ることにしました。
1週間後、来院されたTさん。「あれから治ったんですけど、昨日トンカツでまたやってしまいましたわ」と苦笑いされていました。
フライの熱い衣には注意したいですね。
1)村中沙織ほか:看護基礎教育課程における熱傷および外傷に関する教育内容の実態.熱傷49(1):32-41,2023
2)Cowan D et al: Pediatric oral burns: A ten-year review of patient characteristics, etiologies and treatment out comes. Int J Pediatr Otorhinolaryngol 77: 1325-1328, 2013
3)Svensson P et al: Quantitative determinations of sensory and pain thresholds on human oral mucosa by argon laser stimulation. Pain 49(2): 233-239, 1992



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