口腔カンジダ症とは?
口腔カンジダ症は、口腔内の常在真菌であるカンジダ菌(Candida albicans)による感染症です。日和見感染症のため、免疫力の落ちた人や高齢者、ステロイド使用患者などに発生しやすいことが知られています。
舌や口唇などの口腔粘膜の表面に白苔として見られることが多いですが、白苔がないケースもあります。また、進行した場合は舌苔が黄色~褐色になったり、黒くなって黒毛舌になったりすることもあります(図1)。
カンジダ菌は誤嚥性肺炎の原因菌の一つでもあり、主に口腔内のカンジダ菌を誤嚥することによって発症します。
誤嚥性肺炎の原因菌の大半は多種多様な細菌(肺炎球菌など)ですが、カンジダ菌は真菌類であることに注意を払う必要があります。カンジダ菌による誤嚥性肺炎は、真菌性感染症であるため、通常の抗菌薬では効果が得られず、薬物治療の際は抗真菌薬が必要になります。
口腔カンジダ症の弊害はほかにもあります。免疫力が重度に低下した高齢者においては、カンジダ菌が口腔内から血流に乗るなどして内臓各部に移行し、重篤な内臓真菌症を引き起こすリスクも伴います。
口腔カンジダ症の検査法や対応について
カンジダ菌を検出するためには血液検査法のほか、専用キットを使用した簡易培養検査法(図2)などがあり、当院でも日常診療で活用しています。
検査では、滅菌済みの綿棒を用いて舌や頬粘膜などの口腔内から試料を採取し、それをキット内にある培地に接種して、24~48時間の期間、37℃で培養します。
陽性と判定された場合は、歯科衛生士などによる定期的な口腔ケアを続けるとともに、内科等の主治医と連携して抗真菌薬を投与するなどの対応を行います。
また、カンジダ菌は舌などの口腔粘膜だけでなく、義歯(入れ歯)のレジン素材といった樹脂製材料などにも付着しやすい性質があります。ですから、口腔ケアの際には、舌ブラシを使用した舌表面のケアに加えて、義歯専用の義歯ブラシを使用した義歯の清掃や消毒を行うことも大切です。
口腔ケアによる口腔カンジダ症の予防効果
2025年に慈山会医学研究所付属坪井病院のグループが報告した研究では、2022年4月から2023年7月までの期間にステロイド治療のため歯科衛生士が介入した患者176名を対象として、口腔ケアの導入と口腔カンジダ症の発症リスクとの関係などについて調べています1)。
対象患者は男性105名、女性71名で、平均年齢は71.8±10.6歳でした。
歯科衛生士は医師や看護師からの依頼を受けてから患者の同意のもとに介入し、定期的に口腔内を評価して口腔清掃の介助(残存歯や粘膜、義歯の介助磨き)や、各患者の口腔環境に適した口腔ケアの方法を指導するなどを行いました。また、2022年10月からは、初回介入時に病院で作成したパンフレットを配布しながら説明を行う、入院初日から口腔保清のための毎食後の含嗽薬を導入する、介入は治療開始 3 日以内に行う、などの取り組みを行いました(対象患者は124名)。
取り組み前後の口腔カンジダ症の発症状況を比較した結果、発症率が約42%から約19%へと有意に減少したことが明らかになりました(図3)。
また、取り組み前の発症者22名の再発率は約36%でしたが、取り組み後の発症者24名の再発率は約8%へと有意に減少しました。未発症率も、取り組み前後で約58%から約81%へ有意に増加しました。
(取り組み前:2022年4月~2022年9月介入期間、含嗽薬規定なし、取り組み後:2022年10月~2023年7月、パンフレット配布、含嗽薬導入、治療開始3日以内の介入)
カンジダ菌が付着しやすい部位
2012年に北海道大学口腔診断内科学教室などの共同グループが報告した研究では、余市町在住で65歳~74歳の在宅自立前期高齢者に対して口腔カンジダ菌の保有状況などを調査しています2)。
この調査では、2009年に町内公民館において口腔健康調査を実施し、口腔カンジダ菌の培養検査を行うことができた382名(男性147名、女性235名、平均年齢71歳)を対象としました。また、すでに口腔カンジダ症を発症していると思われる口腔粘膜の白苔、舌乳頭の発赤・萎縮などの所見が認められた被験者などは対象から除外しました。
各補綴物(歯の欠損部を補う装置)における口腔カンジダ菌の検出率を比較したところ、検出率は「欠損補綴物なし」が約44.4%であったのに対し、「ブリッジ*」が約50.6%、「総義歯」が約79.5%になるなど、義歯があると、より高い検出率になることが明らかになりました(図4)。
また、「部分義歯」および「総義歯」の有床義歯の使用者では、「欠損補綴物なし」や「ブリッジ」の非使用者と比較して、それぞれ有意に口腔カンジダ菌の検出率が高くなりました。
*失った歯の両隣の歯を土台とし、連結した人工歯を固定する治療法
* * *
Wさん(80歳代、女性)は、当院に脳梗塞後のリハビリ目的で入院していました。
入院前から舌のヒリヒリ感があり、食事や会話といった日常生活に支障が出ていたため、入院を機に当院歯科を受診されました。
舌苔はさほど認められないものの、口内炎のような局所的な痛みではなく、舌全体に及ぶ症状のため口腔カンジダ症を疑い、歯科外来でカンジダ簡易培養検査を実施しました。
その結果、高いレベルで陽性になったため、定期的な口腔ケアに加え、義歯の清掃・消毒、抗真菌薬の投与などを実施し、経過観察することにしました。
およそ10日後には舌の症状は消失し、食事もしやすくなったWさん。栄養をつけてしっかりリハビリされ、元気に退院されました。
1)宗方まどか,杉野圭史,馬上修一,ほか:当院におけるステロイド治療に起因した口腔カンジダ症に対する歯科衛生士の役割.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌,34(2):157-164,2025
2)後藤隼,山崎裕,佐藤淳,ほか:在宅自立高齢者における口腔カンジダ菌の保菌状態に関する調査.北海道歯学雑誌,32(2):210-221,2012





_1695266438714.png)