NSTの概要
現在、NST(栄養サポートチーム)のある病院が増えています。
NSTでは、入院患者の栄養状態を把握し、各患者に合った栄養療法を提供する目的があります。構成メンバーは医師(医科・歯科)、看護師、栄養士、薬剤師、言語聴覚士(ST)、歯科衛生士などの多職種で、各分野の専門スタッフが職域を超えてそれぞれの知識や技術を持ち寄って、チームとして栄養療法をサポートします。
NST対象患者の選定方法は、まず、患者の血清アルブミン値や食事摂取量、栄養摂取経路、褥瘡の有無、便性状、体重変化量などを調べることから始まります。それらを経過観察した後に栄養状態の改善が不良な場合にNST介入患者とします。
NSTにおける歯科の役割
2016年の診療報酬改定においてNSTにおける歯科の関与が具体的に盛り込まれた結果、NSTに歯科医師が参加した場合、従来の栄養サポートチーム加算に加えて歯科医師連携加算が算定できるようになり、病院における歯科の役割が大きく評価されるようになりました。
歯科医師連携加算を算定している病院のうち、7割以上が病床数300床以上の病院であることが報告されており、中規模以上の病院でNSTへの歯科介入が進んでいることがうかがえます1)。
NSTにおける歯科医師の役割として、口腔衛生管理だけでなく、咀嚼機能の回復、摂食嚥下機能の評価、口腔粘膜疾患の早期発見・治療などがあります。
具体的には、食事を口から摂ることができる状態かを評価するために、口腔内が清潔か、義歯が適合しているか、痛みのある歯やぐらついている歯がないかなどをチェックし、口腔清掃や患者への指導、義歯の調整、虫歯治療や抜歯などの治療や処置を行います。
当院でも具体的活動として、月1回開催されるNST委員会のほか、NSTラウンド(回診)およびカンファレンスを定期的に実施し、歯科衛生士も参加しています。
歯科医師の参加によるNST介入目的の変化
◎エビデンス
2019年の国立病院機構福岡東医療センター・歯科口腔外科などのグループによる研究では、国立病院機構九州医療センターにおけるNSTの介入目的の年次変化について報告しています2)。
この病院で2004年にNSTが発足した当初は、経口摂取の支援が介入目的として多かったのですが、2006年に歯科医師がNSTに参加するようになってから、介入目的には変化が見られました。
具体的な変化内容として、2014年1月~2018年12月の5年間におけるNSTの介入目的は、図1のように経口摂取支援を超えて、約半数が摂食嚥下機能の評価目的となりました。
摂食嚥下機能の評価は口から食べることの評価をすると同時に、誤嚥の有無やリスクを判定します。なかでも誤嚥評価は、高齢者の肺炎で高割合を占める誤嚥性肺炎の予防にもつながる重要項目です。
これらの評価をもとにして、食事の際の姿勢や食事補助の有無、摂食ペースなど、食事介助の注意点を看護師などに対して具体的に指示することが可能になり、歯科医師のNSTへの介入は非常に有効であることが示唆されました。
経口摂取における歯科の貢献
◎エビデンス
2018年に京都市立病院のグループが報告した研究では、患者が経口摂取をする際に行うNSTからの具体的な提案内容に関する統計調査を行いました3)。
この調査は、2016年4月~2017年3月に医師または看護師からNST介入の依頼があった症例のうち、2回以上のラウンドを実施して、介入前後で血液検査などの栄養指標の比較が可能であった55症例を対象として行われました。
その結果、経口摂取に関連する具体的な提案内容には、栄養補助食品や補食(ジュースやゼリー、アイスクリームなど)の使用、食事レベルの調整(食上げまたは食下げ)、栄養剤の内服、嗜好への配慮とともに、歯科に関連する提案(義歯調整や虫歯治療・抜歯、専門的口腔ケアなど)が多くの割合を占めることが明らかになりました(図2)。
つまり、経口摂取を促進していく上で、歯科に求められる役割が少なくないことが示唆されたのです。
NSTというチーム医療の中で歯科医師と看護師の間における情報交換・共有が増えることにより、両者の関係性が以前より密になっている現状があります。
今後も、多職種間での連携を深めながら、より良い医療を提供できるように努めることが求められています。
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Kさん(80歳代、男性)は転倒による大腿骨頸部骨折で当院に入院され、整形外科による手術後、リハビリテーションを実施していましたが、もともと細身の体型で低栄養の傾向にありリハビリ内容に制限が生じていたため、NSTが介入することになりました。
歯科での対応として、家族も交えた問診や検査により入院前から破損して使えなくなっていた部分義歯を修理して活用することが決まり、院外の歯科技工所に義歯修理を依頼しました。
1週間後に修理を終え、再び使えるようになった義歯でKさんの咀嚼機能は向上しました。
その結果、STによる嚥下訓練も並行して行いながら、経口摂取による食形態がペースト食から固形の普通食に改善し、NSTの主治医や管理栄養士による栄養管理のもとで血清アルブミン値も回復していきました。
その後、体力もついたKさんはリハビリも順調に進み、無事退院されました。
1)恒石美登里:今月のピックアップデータ:栄養サポート歯科医師連携加算(医科点数)の算定)の7割以上が、300床以上の病院.日歯評論80:146-147,2020
2)吉田将律ほか:NSTにおける歯科医師の役割と口腔管理について.IRYO75(4):323-327,2021
3)植木 明ほか:経口摂取増加を目指す当院NSTの活動.京都市立病院紀要38(1):12-16,2018





