この連載は2026年7月24日にPHP研究所より『やさしくておそろしい 法哲学講義 生命の価値はみな等しいのか』として刊行されました。ぜひご覧ください。

ここまで数回の議論は、分配的正義に関するものであった。つまり、社会に存在する利益や負担を、どのようにして公平に分かち合うかをめぐる議論であった。医療や看護の文脈では、有事におけるトリアージや、医療機関内外あるいは地域間での人的・物的な資源の分配という実践的問題に適用可能な議論である。公平な分配とは何かという問いに対する答えは、「社会の効用が最大化するように」とか「平等に」とか、いろいろありうるが、それは「どのように分配するか」という観点からの答えである。これはこれで重要なのだが、それとは別に、「誰が分配するか」という、分配の責任主体の観点も忘れてはならない。重要な問題なので、少し長くなるが、今回はこれに取り組みたい。





