2026年5月22日から24日、東京国際フォーラムにおいて第100回日本感染症学会総会・学術講演会(会長:大毛宏喜先生)が開催されました(第74回日本化学療法学会総会[会長:栁原克紀先生]と合同開催)。この回数でおわかりのとおり、今年は感染症学会が創立100周年を迎えた記念の年(図1)なんです。私、いちおう(?)学会の評議員でありますので、5月22日(金)に開催された創立100周年記念式典に出席してきました。今回はそのときのお話しを。
日本感染症学会のこれまで
日本感染症学会は、1926年に「日本伝染病学会」として創立されました。私自身、まだ生まれていないのはもちろんですし、本学(大阪医科薬科大学医学部)の前身、大阪高等医学専門学校の創立はその翌年である1927年ですので、同門の先生方から学会創立の経緯を伝聞したこともなかったのです。そのため、記念式典が始まるまでに会場に流されていた学会の歴史を紹介するスライドをたいへん興味深く拝見しました。
当時の日本はコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、そして結核などの多くの感染症(当時は「伝染病」と呼ばれていました)が猛威を振るっており、社会に深刻な影響を与えていました。そのため、学術的な知見を集積し、とくに臨床現場へその知見を還元することが強く求められていたそうです。東京市立駒込病院(現・都立駒込病院)の当時の院長であった二木謙三先生(1873-1966)らが学会設立の準備を進め、1926(大正15)年、二木先生を創立者総代として学会が創立され、会員2,100人を集めるとともに、同年9月22日、東京帝国大学において第1回総会・学術総会が開かれたとのことです。本学会はその後、1974(昭和49)年に「日本感染症学会」と改称されて現在に至ります。そして二木謙三先生のお名前は学会賞「二木賞」に残っています。
二木先生が生み出した「こまごめピペット」
スライドでは、二木先生が発明された「こまごめピペット(図2)」も紹介されていました。今でも化学実験で用いるピペットは原則、口で吸うのですが、病原微生物が含まれる液を扱う際に、この「口でのピペット操作」はたいへん危険です。そのため二木先生はまず、ピペットにゴムの乳頭を装着することを思い立ちました。さらに液を勢いよく吸いすぎてゴム乳頭に入ってしまうことを避けるため、ピペットの目盛の上の部分を膨らませて、液がそれより上には来ないようにしました。これらの工夫を施したピペットを「こまごめピペット」と名付けたのです。
二木先生はご自身の発明品であるこのピペットに対し、ご自分の名前をつけずに病院の名前である「駒込」をつけたのですが、コレラ菌・赤痢菌の研究においてもご自身が発見した新型菌に対して自分の名前をつけなかったんだそうです。今回のスライドではこのことについて、二木先生のお孫さんである二木謙一先生(歴史学者)のお話しを紹介していました。二木先生は常々、「自分の名前には「謙虚」の「謙」がついているからなあ」とおっしゃっていたそうです。
心に残る行幸啓
100周年記念式典の案内が届いたとき、私は割と気安く「出席」の返事をしました。しかしその後、持ち込み荷物は開けますよとか、金属探知機によるボディチェックがありますよとか、ゴロゴロかばん(キャリーケース)や長い傘などは持ち込みできませんよ、などの連絡がありました。さらに開始時刻よりかなり前に着席しておくこと、セキュリティチェックにも相当の時間がかかる可能性があることなど、細かい注意事項が知らされましたので、相当「やんごとない方」がご臨席されるのではないか、と想像しまして、私、新幹線の時間を2本早めて上京しました。
そうしましたら当日は、天皇皇后両陛下の行幸啓を賜りまして、天皇陛下のおことばも賜りました。たいへんありがたいことでして、直近ではコロナ禍の際の学会・会員の努力が報われたと、ほんとに感激した次第です。このときのようすは新聞各紙でも報道されました1)。さらには来賓として厚生労働大臣、文部科学大臣、日本医学会・医学会連合会長、日本医師会会長がご臨席され、ご祝辞も頂戴しました。現在の学会理事長の松本哲也先生、記念事業実行委員長の四柳宏先生、第100回の総会長である大毛宏喜先生はみな、「次の100年」に向かう学会の使命についてお話しになっていましたが、私が学会100周年の節目に立ち会えたことは感慨深く、うちの教室員にも語り継いでいこうと思い、帰阪した次第でございます。
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壇上の雅子皇后陛下はスカイブルーのドレスで、天皇陛下は同じ色のネクタイをされていました。ミーハーの私はおお、これこそ女性誌が「リンクコーデ」と呼んでいるお姿だ、と思いました。
実は、もうお気づきかもしれませんが、わが大阪医科薬科大学医学部も来年、創立100周年を迎えます。こちらも節目の年に立ち会えることは、とてもありがたいことだと思いますし、これからの100年、本学としてもやはり社会的使命を果たしていく責務を、改めて構成員全員の心に刻みたいと思っております。
1)朝日新聞:両陛下、感染症学会式典に出席,2026年5月23日付朝刊13面



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