『看護学テキストNiCEがん看護 改訂第2版』が、4年前に発行された第1版の改訂版として発行されました。第1版に引き続き、がん医療領域の看護師や医師、総勢55名による執筆です。看護については、がん看護の領域の教育、研究、実践のバランスの良い人材グループで、いずれの方々もがん看護界のエキスパートとして学会ではおなじみの執筆者です。がん治療に取り組む患者の心や身体の反応は、臨床経過と発達段階に大きな影響を受けます。個別性の高い看護アプローチを導くために、初版から第Ⅲ章「がんになった人とその家族の理解および看護」が設けられているのが本書の特徴です。
「がん」という病気の解明が進み、治療法が開発されると、治療に伴う負担の量も質も変化し、必然的に人々のがんという病気への認識や反応も変わります。そのため、がん医療に関連した領域の書籍は、タイムリーな改訂が必要であり、今回の改訂は各所から待たれていたと思います。

分子標的治療薬はもとより免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法の開発やがんゲノム医療の進展があり、治療の選択肢は確実に広がっています。そのような変化を受けて、第Ⅱ章「がんおよびがん医療の理解」において「がんゲノム医療」「がん免疫と免疫療法」が解説され、さらに第Ⅳ章「がん患者に対する治療」のうち「免疫療法」では、使用される薬物の種類が倍ほどになりました。生存期間が得られると同時に有害事象との付き合いも課題となります。日常生活を維持するために看護師が行う支援はますます重要で、より効果的に実践するために、患者のセルフケア能力への着目がさらに強調されています。
また、第Ⅲ章では、ACPに関する国の取り組みが明示されています。自分自身が生命の危機的状況で意思を表示できなくなったとき、どのような療養を望むかといった国民的議論が必要です。死が迫る中で、患者の意思確認のむずかしさに看護師は頻繁に直面します。学生時代からACPについて議論し、考えておく必要があります。
さらに、近年頻発している大規模災害時の対応についても新たに節を設けて記述されています。本書はこのように、様々な社会の変化をとらえて、記述に反映させる努力がなされています。是非、手に取ってお読みください。
看護の基礎教育を受ける学生が学ぶことを前提に書かれていますが、がん看護全般をカバーしていますので、これからがん患者がいる病棟や外来に異動になるキャリアのある看護師など、がん看護に関心のある看護師にとっても、有用な書であると思います。
看護学テキストNiCEがん看護 改訂第2版
●編集:鈴木久美(大阪医科薬科大学)、林直子(聖路加国際大学大学院)、佐藤まゆみ(順天堂大学大学院)
●発売日:2025年1月20日
●体裁/本体価格:B5判・カラー・364頁/3,200円+税10%
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