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看護のエコー/テレナーシングWebセミナー(前半)主催:日本在宅ケア学会

看護のエコー/テレナーシングWebセミナー(前半)主催:日本在宅ケア学会

2021.12.08NurSHARE編集部

 本記事では、日本在宅ケア学会によるセミナーのレポート記事を2回に分けて発信します。なお、本セミナーは12月11日(土)、12月19日(日)にも開催が予定されています。お申込みをご希望される場合には、セミナー要項および同会のホームページをご参照ください。
※12月19日開催回の申込み締め切りは12月9日(木)です。
※事前またはセミナー後にオンデマンド研修(2時間30分)の受講を修了することが参加必須要件です。 

 日本在宅ケア学会(亀井智子理事長、聖路加国際大学)は11月21日(日)、オンラインで「看護のエコー/テレナーシングWebセミナー」を開催した。医療における急速なイノベーションやコロナ禍によって情報通信技術(ICT)や各種機器を使用した看護実践の推進を受け、新たなケア方法として期待される「看護のエコー」「テレナーシング」の基礎を学ぶことを目的としている。エコーに関する研修はこれまでも有料で実施されてきたが、同セミナーは厚生労働省委託事業および同学会の委員会研修事業としてテキスト代含めすべて無料とし、より気軽に多くの看護師が受講できるよう取り計らった。

エコーによる可視化で患者の負担を軽減

 同セミナーは2部制とし、午前中に開催した第1部は「看護のエコー」を題材とした。真田弘美先生(東京大学)、松本勝先生(石川県立看護大学)、保坂明美先生(訪問看護ステーションフレンズ)、三國陽子先生(よどきり訪問看護ステーション)、小川真理子先生(同)が講師を務めた。参加者には事前にeラーニングを用いてエコーの基礎知識を身につけてもらい、セミナー当日は看護のエコーを用いた現場での研究実践やその成果、在宅での実践例が紹介され、Q&Aでは司会の玉井奈緒先生(東京大学)の進行のもと、江田純子先生(岡⼭県訪問看護ステーション連絡協議会 会⻑)と岩本大希先生(WyL 株式会社/ウィルグループ株式会社 代表取締役)もディスカッションに加わり、エコーについての興味関心を高めてもらえるよう進行された。

 セミナーの一番手を務めた真田先生は『エコーを使えばここまでできる訪問看護』と題して講義を行った。真田先生は30年以上エコーの活用に関する研究に携わってきた自身の経験から、「エコーがいかに看護に必要か、身をもって感じてきた。最近では在宅でも使用して頂けるようになってきている。ぜひエコーを使って正しいアセスメント、短時間かつ患者様に喜んで頂けるケアを実践してほしい」と話す。講義では「看護技術を可視化する必要性」「第6のアセスメントーエコーを用いた可視化」「在宅で必要な可視化技術とは」「今後の在宅でのエコーの活用法」と大別して4つのテーマを展開。エコーが看護の場で活躍できる具体的な事例や今までのアセスメントではわからなかった点を可視化する意義・強みを、豊富な画像を用いて解説した。また、在宅ケアにおいても高画質・小型軽量の携帯型エコーやAIによるアシストを活用すれば、療養上の世話から診察の補助まで患者の負担を軽くでき、患者に最後まで安心して自宅で過ごしてもらえるようになることを伝えて講義を締めくくった。

(真田弘美先生『エコーを使えばここまでできる訪問看護』
講義用スライドより許可を得て転載)

 松本先生は『エコーによる排尿・排便ケアへのAI支援』を取り上げた。一口に「尿・便が出ない」と言っても、現場では「溜まっているが出せないのか」「そもそも本当に溜まっているのか」「どこにどれだけ溜まっているのか」が分からなくて困ることが多い。しかしエコーを用いたアセスメントにAIによる画像の読影支援を加えれば、排尿ケアにおいては膀胱内尿量の計測による下部尿路機能の評価、排便ケアにおいては直腸便貯留を観察することによる便秘の評価が明確にできるようになり、より的確で患者の負担が少ないアセスメントを可能とするのだという。松本先生は講演中、エコーによる画像の撮影は技術の標準化によってアセスメント者の技量の影響を最小限にできるが、読影の難易度が高いことについても指摘。自身が開発に携っている便貯留の有無判定や性状評価のための直腸エコー画像読影のためのAI支援ツールを紹介し、現場での利用実現に向けての取り組みについて説明した。

現場の視点からエコーの強みを語る

 保坂先生、三國先生、小川先生は、『実践で活かすエコーによるアセスメント 小児・高齢者・がんターミナル期の例』と題し、それぞれ現場で行ってきた実践的なエコーについて講演した。保坂先生はステーションへのエコー導入経緯や自分たちの看護がエコーによってどう変わったかを話し、訪問看護におけるエコーを用いた水腎症評価により早期介入ができた18トリソミー児の事例を紹介。これまでのフィジカルアセスメントでは判断が難しかった領域においても、的確なアセスメントとスムーズなケアのためエコーによる可視化が重要と自身の経験から語った。
 三國先生は訪問看護の現場からみたエコーの利点や情報を可視化したアセスメントの重要さのほか、エコーを用いた排尿・排便ケアの事例として「骨折に伴い尿道留置カテーテルを挿入したものの尿が出なかった80代女性」「肝性脳症により自己管理や病状の経過記録が困難となり、排便状況が分からず便秘のアセスメントが難しい80代男性」のケースについて解説した。小川先生は事業所の管理者としての立場から講演。エコー導入の背景や活用確立までの道筋、活動実績として「療養者にむけたエコー実施の回数」「ステーションスタッフたちへの働きかけ」「他の職種からのエコー実施要請例」「ステーションスタッフからの相談対応例」を紹介し、エコーが療養者、看護師、訪問看護ステーション全体によい相乗効果をもたらしていることを述べた。

(真田弘美先生『エコーを使えばここまでできる訪問看護』
講義用スライドより許可を得て転載)

 本セミナーの内容からも、テクノロジーの発展が看護の向上に大きく寄与する可能性を秘めていることは明らかであろう。社会構造の変化によって地域包括ケアシステムの推進が加速する中、地域における看護師への役割遂行の期待はますます高まっている。限られた資源・時間の中で提供される在宅看護において、療養者が自宅でよりよい生活を送れるよう、テクノロジーを活用した看護が標準となる時代の到来を予期させた。

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