東京医療保健大学和歌山看護学部成人看護学領域(担当:北得美佐子 教授)とNurSHARE編集部は2022年7月29日(金)、同学が行うシミュレーション演習のLIVE配信企画を実施いたしました。配信中には終始たくさんのご聴講者様からのご質問があり、北得教授より可能な限りご回答を頂いておりましたが、時間が限られておりすべてにご回答を頂くことは難しい状況でございました。そこで本ページでは、北得教授のご協力を頂き、LIVE配信中にご回答くださった質問も含め、頂いたすべてのご質問への回答一覧を掲載させて頂いております。本配信企画のレポート記事と併せて、ぜひご覧ください。
【質問目次】
授業設計、Medi-EYEの活用方法について
2年生のレディネスについて
2年生への事前課題について
SA(Student Assistant)の選択条件、役割、報酬、教育方法について
シミュレーションの実施方法について
教員の役割、共通認識について
シミュレーション直後のデブリーフィング・フィードバックについて
全体でのデブリーフィング・情報共有について
シミュレーション演習の評価方法について
他の科目・領域との連携・調整について
LIVE配信・撮影について
その他の質問
授業設計、Medi-EYEの活用方法について
質問①
シミュレーション演習は、28日、29日と連日であるほうが良いのでしょうか?
回答①
時間割上の問題もありますが、前日の学びを踏まえて翌日行うと、様々な視点を踏まえた観察や報告が行えており、学生・教員ともに成長を実感しています。
質問②
事例は教育用電子カルテ「Medi-EYE」を用いているのでしょうか? 活用するメリットは何でしょうか?
回答②
今回は本学が作成したオリジナルの胃がんの術後の患者の事例をMedi-EYEに搭載して使用しました。臨地実習の際と同じように電子カルテから情報を収集・分析し、看護計画を立案します。
紙上事例のように必要な情報が全て整理して記載されているのではなく、臨地と同様に様々な情報が記載されているため、学生は、自ら看護を行うために必要な情報は何かを考え情報収集するスキルを臨地実習前に学ぶことができます。
質問③
「Medi-EYE」を用いたシミュレーション演習の準備として学生に何か提供しているでしょうか?
回答③
電子カルテの使用方法の動画を配信しており、情報収集の方法を参照することが出来ます。
質問④
演習の内容は、どんな看護実践能力の習得を目標としていますか?
回答④
2年生の演習ですので高度な看護実践能力は求めていません。まずは、術直後、術翌日に必要な観察項目を挙げることができ、観察した情報から全身状態をアセスメントし、必要な看護を考える。また実践した内容を報告できるといったことが目標です。
3年生の演習ではもう少し難易度の高い事例を担当し、実践内容の詳細までを学生どうして相互評価するなどしています。デブリーフィングではGASモデルを使用しています。
2年生のレディネスについて
質問①
このシミュレーション演習までに、学生はどのようなことを学んできていますか?
また、実習は経験していますか?
回答①
フィジカルアセスメントは1年次後期、周術期看護は2年次前期の今回の急性期看護援助論の講義の最初の方の講義で学んでいます。
ゴードンの枠組みは、1年次後期に「1.健康知覚ー健康管理パターン」を学び、2年次前期に2~4まで、5以降は後期というように、ゆっくり学んでいます。
実習は経験していません。1年次の時に基礎看護学実習Ⅰがありましたが、コロナ禍でほとんど臨地を経験できていません。
質問②
学生はシミュレーション教育に慣れているように感じましたが、急性期以外の科目でもシミュレーション教育を取り入れているのですか?
回答②
学生はシミュレーション演習はこの授業が初経験です。前日の演習の効果が出ていると思います。この演習後の様々な科目で演習を経験していきます。
質問③
コロナ禍で臨床実習はできていないのかもしれませんが、このようなレディネスの学生が実習することに対して、臨床側の評価はどうでしょうか?
回答③
とても好意的に受け入れてくれています。昨日も看護部の教育担当者や看護副部長が見に来てくれていました。
シミュレーション演習の様子を見ることによって、臨地実習指導のヒントが得られると言うご意見もいただいています。
2年生への事前課題について
質問①
今回の演習までに学生が授業時間とは別で自己練習・グループ練習などをする時間などはありますか?
回答①
自主練習の期間は特に設けていません。他学も同様だと思いますが、この演習前ギリギリまで他の実習や講義などが詰まっているため学生は余り空き時間がありません。
講義の最初のコマから最後にはこのような演習を行うことを説明していますし、1カ月以上前から演習の内容を開示しMedi-EYEのカルテ情報も公開し、説明動画も配信しているので、自己学習や自主練習は、学生それぞれの自主的なものとなります。
質問②
シミュレーション演習では、事前に多くの資料を提示して学生同士で考えて学習できるようにすると思いますが、どれくらいのボリュームの学習資料を提示されていますか?
回答②
"教材シェア"で共有した以下のスライドをご参照ください。
シミュレーション演習LIVE配信教材(2022年度急性期看護援助論)
質問③
教員やSAなどが実施する模範例やDVD視聴などを学生に見せていますか?
回答③
事前にDVDなどは見せていません。本学のHPでアップしているものを見ている学生はいると思います。
質問④
事前課題へのコメントはしていますか?
回答④
内容は確認しますが演習時のパフォーマンスがコメントによって左右されるので原則コメントいたしません。
SA(Student Assistant)の選択条件、役割、報酬、教育方法について
質問①
SAが指導する2年生への効果は、教員が指導する場合と比べ、どのようなものがありますか?
回答①
あと1、2年すると、こんなようにアドバイスできるようになると、モチベーションが上がります。
また、教員が説明したよりも、SAが説明し方がよく覚えていることもあります。
質問②
3、4年生にとって、SAとして下級生を指導する効果について感じていることを教えてください。
回答②
3、4年生は下級生に教えるということで大変熱心に自主的に学習して来ます。
3年生は後期の急性期実習の事前学習に繋がりますし、4年生では国家試験対策にも繋がります。
質問③
SAの選出条件は決めていますか?
回答③
基準は設けていません。学内の連絡網で公募し、希望者が自主的にfomsに回答する形で応募できるようにしています。希望者すべてに担ってもらっています。
成績が悪い学生でもSAの担当部分は大変学習してくるので、SAの体験がきっかけで成績が上がる学生もいます。
質問④
SAへのオリエンテーションはどのようにどのくらいの時間をかけていますか? 何かを研修を課していますか?
回答④
"研修"というまでのことはしていませんが、オリエンテーションを1コマ行い学習資料や動画配信、患者なりきりガイドや指導ポイントのマニュアルも配布して共通の知識が得られるようにしています。
教材シェアで共有した以下のスライドをご参照ください。
シミュレーション演習LIVE配信教材(2022年度急性期看護援助論)
質問⑤
SAは待機室に移動後のデブリーフィングやまとめにも参加していますか?
回答⑤
担当したグループのデブリに参加していますが、なるべく口を出さないように伝えており、進行が止まった場合などに少し声をかけるようにしています。
質問⑥
上級生が必要人数確保できない場合はどうされていますか?
回答⑥
もし不足したら再募集しますが、有難いことに不足したことはありません。
質問⑦
SAには報酬が出ますか?
回答⑦
SAには少額のクオカードと昼食を出しますが、ほぼボランティアです。
報酬よりも、前年度の先輩の様子を見てSAだけが着用できるスクラブに憧れて応募する学生が多いです。

学生たちが憧れるSA専用のスクラブ(写真中央)